シキミの花 撮影・小松常光

 古い分類ではモクレン目のシキミ科とされていたが、その後、マツブサ科とシキミ科がシキミ目として独立し、さらに最新の分類では、シキミ科はマツブサ科に統合されてマツブサ科シキミ属となり、アウストロバイレヤ目の中に置かれている。

 いずれにしても、以前紹介したモクレンなどと同様に、被子植物の中では非常に古い系統である。

 その花をよく見ると、がく片と花びらの区別がなく(このような状態のものは花被片と呼ばれる)、枚数もまちまちである。また、その内側にある雄しべの数もはっきりと定まっておらず、少ないものは15本、多いものは28本あるとされる。そして、中心部には8本の心皮が合わさった雌しべがある。この部分から、香辛料としておなじみの八角と非常によく似た実ができる。なお、八角(植物としての和名はトウシキミ)もシキミ属であるが、日本で自生しているシキミの方は非常に強い毒が含まれているため、果実を食することはできない。

 シキミの果実は、果皮が乾燥すると種子がはじけ飛ぶ性質がある。有毒であるため、誰も果実を食べることなく、自力で種子を散布しているのかと思いきや、そうではないことが近年の研究から判明した。

 シキミの樹上の果実にはヤマガラがやってきて、消費したり貯食したりするために活発に運ぶそうである。また、地面に落ちた種子はアカネズミ属のネズミが運ぶことも判明している。これらの鳥や動物が、シキミの毒に対して耐性があるのかは定かでないが、ヒトにとって有毒だからといって、必ずしも他の動物も食べられないとは限らないらしい。

 なお、シキミの葉には、シキミタマバエが虫こぶをつくる。10年前に筆者が初めて新属として学名を発表した、思い出深い昆虫である。(佐賀大農学部教授)=毎週日曜掲載