北斗七星の近くに「コルカロリ(チャールズ王の心臓)」と名付けられた3等星が、空高く観察しやすい季節となりました。りょうけん座にある、ちょっと変わった名前のこの星は、望遠鏡で観察すると、真珠のような明るい星と青緑色のやや暗めの星がペアとなった美しい二重星で、天体観察会でも人気があります。

 この星の名前のあるじは、近年まで英国王チャールズ二世(1630−1685)と長らく伝えられてきました。ところが、これは誤りで近年の研究によって「チャールズ一世(1600−1649)」であることが明らかになっています。

 さかのぼれば、天文学者アンドレ(仏)が自身の星図に「チャールズ二世の心臓」と誤って記したことが原因で、この誤解が定着してしまっていたのです。真実が判明したのは、ようやく400年近くもたった現代です。チャールズ一世は清教徒革命によって処刑された悲運の英国王です。チャールズ一世の侍医スカーバラが、国王の名誉のために「チャールズ王の心臓」の命名を提案したのが、この星の名前の由来となっています。

 現在のイギリス国王は「チャールズ三世」で、前エリザベス女王の崩御に伴い昨年5月6日に即位されました。星名の由来となった同名のチャールズ王の末裔(まつえい)です。この機会に美しいこの星を学習館の望遠鏡で観察してみませんか?

 文・早水勉(佐賀市星空学習館副館長)

 

○ 星空学習館のイベント

「5月の定例観望会」

 毎週金・土曜20〜21時45分(最終受付21時15分)、無料、予約不要