ギャンブル依存症をテーマに精神科医や当事者らが語ったセミナー=小城市のゆめぷらっと小城

 ギャンブル依存症をテーマにしたセミナーが5日、小城市のゆめぷらっと小城であった。専門家や当事者らが登壇し、本人の意思だけではやめられず多額の借金を抱えてしまう依存症の深刻さと、回復に向けて当事者や家族同士がつながる重要性を共有した。

 肥前精神医療センター(吉野ヶ里町)の精神科医・宇佐美貴士氏は、生涯でギャンブル依存症が疑われる人の割合は3・6%と他の依存症より高い一方、治療につながるケースは少ない現状を紹介した。自助グループへの参加やリハビリ施設の利用が回復に有効とし、ギャンブルがやめられない背景にうつ病など併存症がある場合も指摘して「生きづらさの解消のためにわれわれ医療機関も頼ってほしい」と呼びかけた。

 当事者に対する家族の対応も助言し、叱責(しっせき)や借金の肩代わりは避けるよう求めた。「分かっていてもやめられないのが依存症。本人が向き合うべきはギャンブルなのに、『うるさい家族と自分』へと図式がすり替わり、ギャンブルの言い訳に使われる」と理由を説明した。

 当事者の石見健人さん(33)=山口県=は、10代後半でギャンブルにはまり、オンラインカジノで4千万円の借金を抱えた体験を語った。家庭内窃盗や勤務先での横領、失踪を経験し「自分がいなければみんな幸せに暮らせる」と思い詰めたという。横領が発覚した後、当事者の集まりで「初めて自分の気持ちを分かってくれる人に出会えた」。現在は依存症を公表して再就職し、全国の仲間との自助活動が回復にもつながっているとした。

 セミナーはギャンブル等依存症問題啓発週間(14〜20日)を前に全国ギャンブル依存症家族の会佐賀などが開き、約80人が参加した。子どもや配偶者の依存症に苦しむ家族の報告もあった。

 家族の会佐賀は毎月第1日曜に、家族会を佐賀市の市民活動プラザで開催している。参加費は千円。問い合わせは電話090(4580)0043。(円田浩二)