任期満了に伴う新座市長選(7月7日投開票)が30日告示される。いずれも無所属で、3選を目指す現職の並木傑氏(65)と、元市議の新人工藤薫氏(74)=共産推薦=の2人が立候補を表明している。少子高齢化で自治体の子育て支援や高齢者福祉の充実が重視される中、2期8年に及ぶ並木市政の是非を争点に、委託業者が運転手不足などを理由に来年度からの撤退を要請しているコミュニティーバスなど、公共交通の在り方や所沢市などが導入した給食費無償化などを巡り論戦が交わされそうだ。

 市のコミュニティーバス「にいバス」は2009年、市内循環バスとして、東武バスウエストが運行。当初は北回りと南回りの2路線だったが、2度の再編を経て23年からは市役所前から「志木」「ひばりが丘」「清瀬」「東久留米」の各駅に向かって戻る4コースが運行されている。

 市によると、いずれも平日は1日6〜7本、土日祝日は4〜5本を運行。乗車料金は4路線共通で大人180円、小学生以下90円。75歳以上の高齢者と妊婦、障害者手帳所持者は無料。23年度1年間の4路線の総利用者数は計15万4221人で1日平均約400人だった。

■運行ダイヤを協議

 東武バスウエストは昨年12月、「連続運転時間の短縮による運転手不足と燃料の高騰などを理由に25年度から撤退したい」などと市に要望書を提出。交渉は継続を求める市と平行線だったが、同社は今年5月、「待遇改善策などにより運転士不足に改善の兆しがある」として、「25年度は継続の方向」と回答している。

 ただ、運行ダイヤの見直しを含めた協議は継続されており、予断は許さない状況だ。

 6月初旬、市役所前のバス停で「清瀬コース行き」を待っていた新座市の無職女性(85)は「デマンドタクシーはいつの間にかなくなったので、東久留米駅近くから市民会館や図書館に行く時に利用している。路線バスは停留所が遠いので非常に助かっています」と恩恵を強調する。

 同所で「東久留米コース」を待っていた清瀬市の障害者男性(57)は「(量販店の)ロヂャースやドン・キホーテに買い物に来る時に利用してます。以前は40分かけて歩いていた。路線バスはほとんど利用しないので、これがなくなったら厳しいな」と困惑顔だ。

■公共交通の在り方

 並木氏は朝霞市出身。大学卒業後、商社を経て義父が経営する幼稚園を継承。市議5期を務め、8年前の市長選で、前市長の後継を訴え、初当選した。

 工藤氏は東京都出身。大学卒業後、市内の小学校で教諭を8年間務めた。1992年の市議選に初当選し、2019年まで7期28年間、市議を務めた。

 公共交通の在り方について、並木氏は「デマンドタクシーはハードルが高く、ライドシェアは一般化すれば利用したい」、工藤氏は「市は地形上、市役所や病院に行けない人もあり、にいバスの路線はさらに拡充し、デマンド交通の導入も考えたい」と話す。

 給食費の無償化について、並木氏は「県と国の協力で推進したい」との考えを示し、工藤氏は「市では無償化の年間予算は約5億7千万円と試算しており、市の一般会計予算のわずか1%。子育て世代の貧困が広がる中、やればできる」としている。

■開票日、大勢判明は夜10時過ぎか

 新座市長選の投票は7月7日午前7時から午後8時まで、大和田公民館など市内計35カ所で行われ、同日午後8時50分から市民総合体育館で即日開票される。大勢判明は同日午後10時過ぎの見込み。

 有権者数は6月1日現在、13万7547人(男6万8032人、女6万9515人)。