日本高野連が今夏の全国高校野球選手権大会で暑さ対策として、午前と夕方に試合を分ける「2部制」を一部の日程で導入する。山陰両県では昨夏の県大会で暑さが原因の治療中断が相次ぎ、専門家からは導入に理解を示す声が聞かれる。一方で設備面や運営面の負担を考慮し、島根、鳥取両県の高野連は全国選手権大会の結果を検証して今後の対応を決める方針だ。

 日本高野連が一部の日程で2部制の導入に踏み切ったのは、暑さがピークになる時間帯を避け選手がベストパフォーマンスをしやすい環境を整えるのが狙い。

 猛烈な暑さは、7月にある島根大会でも大きな問題になっている。気象庁によると、松江市営野球場と県立浜山公園野球場で10日間にわたって行われた昨夏の大会期間中に、松江と出雲で最高気温が30度以上の真夏日は8日間あった。

 島根県高野連は三回、五回、七回の終了時に給水タイムを設け、各チームもベンチに扇風機を持参し氷で体を冷やすなどの対応を取ったが、暑さのために試合中に足がつる選手が続出し、治療のための中断が相次いだ。

 日本生気象学会によると、熱中症は気温と湿度に加え、身体状況や運動などの行動で発症リスクが高まる。同学会理事を務める紫藤治島根大名誉教授(環境生理学)によると、最高気温が25度を超えると熱中症になる人が出始め、30度を超えると急増する傾向にある。

 紫藤名誉教授は、県大会が午前から夕方までの時間帯に集中して行われている現状を踏まえ「暑さを避けるには、2部制は理にかなっている。山陰地方でも効果的だと考えられる」と話す。

 ただ、山陰両県の高野連には、即座に導入に踏み切れない事情がある。日本高野連が導入する2部制では、夕方の開始予定時刻が午後4時、同5時、同6時半と想定されている。このスケジュールを県大会に当てはめると、照明が必要な時間帯に試合が行われることになるが、必要な照度が確保できない球場もある。

 また、夜間の試合は運営を担う当番校の生徒や、応援のため訪れる生徒の負担の増大につながるため、島根県高野連の山崎慎司専務理事は全国選手権大会での導入に賛同しつつ「県大会で同じように踏み切るには難しい」と話す。

 実際に試合をするチームにとっても、2部制はメリットばかりではなさそうだ。特に島根県東部の会場に数時間かけて移動する同県西部のチームへの影響は大きく、浜田高の家田康大監督は「選手のことを考えると涼しい時間帯に試合をしたほうがいいが、夜に試合が終わった場合は、宿泊日程や調整方法を変える必要がある」とした上で、ナイターでの試合に慣れるための練習環境が整っていないことも課題とした。