全国76病院を運営する徳洲会グループ(本部・東京都)が、へき地医療に対応するために導入した小型ジェット機が出雲空港(出雲市斐川町沖洲)にも飛来している。出雲徳洲会病院(同町直江)の医師が搭乗して奄美空港(鹿児島県奄美市)に飛び、系列病院で診察に当たるなど、離島医療を支えている。

 離島などに総合病院を置く同グループは、人手が足りない病院に全国の医師や医療スタッフが交代で応援する仕組みを構築している。沖縄、鹿児島両県の離島間を移動する場合は、自前のプロペラ機を運用し、それ以外の地域間移動は民間の定期便に頼っていた。

 しかし定期便では空席状況や便数、乗り継ぎなどで効率的な移動が難しいのが課題となっており、時間短縮を目的にジェット機の導入に踏み切った。

 導入したのは全長12・99メートル、定員7人で、最大巡行時速782キロ、最大運用高度1万3106メートル、航続距離2264キロのホンダジェット。「徳洲ジェット」と命名し、2022年5月から試験運用を行い、24年2月に自主運航を始めた。

 出雲徳洲会病院では月に1回、大谷裕外科部長(55)が奄美大島の瀬戸内徳洲会病院(鹿児島県瀬戸内町)に派遣され、総合診療や当直、手術を行う際に利用している。

 これまで、同病院に向かうには定期便で出雲空港から羽田空港経由で奄美空港を利用し、約7時間かかっていた。ジェット機の導入により、奄美空港に直行し、約3時間の時間短縮につながったという。

 プライベート機なので保安検査場を通らずスムーズに搭乗できるのも特徴。出雲−奄美間はこれまでに3回運航し、帯広空港(北海道帯広市)や離島の徳之島空港(鹿児島県天城町)にも飛んだ実績がある。

 他のフライトとの兼ね合いもあり毎月利用できるとは限らないというものの、大谷部長は「移動時間が短くて体が楽になった。診療時間も長くなった。今後も利用したい」と話す。

 出雲徳洲会病院の田原英樹院長は「医療従事者が動くことで患者の負担が軽くなる。効率のよい移動でへき地医療の充実につなげたい」と強調した。