自民党の派閥のパーティー収入不記載事件が再び、動きを見せた。東京地検特捜部は、萩生田光一前政調会長と世耕弘成前参院幹事長の政治資金規正法違反は認定せず、「嫌疑不十分」と判断。両議員の会計責任者については違反を認定しており、議員本人の刑事責任を問う難しさが改めて浮き彫りになった。大型連休後に本格化する国会の規正法改正論議に影響するのは必至だ。

「告発を認めるに足りる証拠がなかった」

検察幹部は2日、不起訴理由をそう説明した。

規正法は収支報告書の提出義務を会計責任者に課しており、議員が罪を問われるのは具体的な指示を出すなど、会計責任者との共謀が認められた場合にとどまる。

告発人の神戸学院大の上脇博之教授は検察審査会に審査を申し立てる方針。検審が「起訴相当」や「不起訴不当」と議決すれば再捜査が始まる。

だが、新たに有力な証拠が見つからない限り、再び不起訴となる可能性は高い。特捜部が両議員について、証拠はあるが悪質性などを鑑みて不起訴とする「起訴猶予」ではなく、証拠そのものが足りない「嫌疑不十分」と判断したからだ。

犯罪白書によれば、平成30年〜令和4年に検審が起訴相当や不起訴不当と議決した事件のうち、検察が検審の審査前に起訴猶予とした事件は議決後、3〜5割程度が起訴されている。だが、検察が元々、嫌疑不十分とした事件では、議決後に起訴されるケースが1〜2割にとどまる。

上脇氏は他にも複数の国会議員を告発しており、今後も特捜部は難しい判断を迫られそうだ。(桑波田仰太、久原昂也、星直人)