無くならない痴漢犯罪の防止を呼び掛けるため、埼玉県警鉄道警察隊は浦和麗明高校の演劇部生徒が演じるミニドラマ形式の啓発動画を作成した。動画は動画投稿サイトのYouTube県警公式チャンネルで公開されている。16日はさいたま市浦和区の同校で視聴会が開かれ、生徒36人が参加。生徒からは、痴漢被害に遭っている人にひと言声を掛ける勇気が大切との声が出ていた。

鉄警隊が現役高校生と一緒に痴漢問題に関する啓発動画をつくるのは今回で2作目。前作は痴漢被害者の視点でつくられていた。

今作は「have courage〜小さな勇気は大きな安心となる〜」との題で、痴漢の目撃者視点の動画。電車内で痴漢被害に遭っている人を見かけたら、「大丈夫ですか」とのひと言を掛けるように呼び掛ける内容だ。

出演しているのは浦和麗明高校の演劇部員8人。同校が県内の鉄道事業者らと高校で組織する県鉄道痴漢犯罪防止連絡協議会に参加していたことから、鉄警隊側が協力を依頼した。脚本や撮影は鉄警隊側が用意し、撮影は令和5年12月と6年1月に行われた。

動画のテーマとなっている被害者への声掛けについて、鉄警隊は「被害者への『大丈夫ですか』との声掛けは、周囲に気づかれていることを痴漢にも分からせることができ、被害拡大の防止になる」としている。

16日の浦和麗明高校での視聴会には鉄警隊も同席。動画を見た生徒からは「痴漢かどうかを確認するにはどんな方法があるのか」との質問も。これに対して鉄警隊は「混雑していると確認できないので、そういう場合は被害者に『大丈夫ですか』と声を掛けてほしい」と回答していた。

視聴会に参加した演劇部員で主演の3年、三瓶由騎さん(17)は動画について「痴漢を目撃した人が被害者に声を掛けるきっかけになってくれたらうれしいです」と話していた。

鉄警隊は「痴漢は心に傷を与える卑劣な犯罪。社会全体に『痴漢を許さない』という機運が高まってほしい」としている。

鉄警隊によると、5年中に寄せられた電車内での痴漢被害相談は218件。路線別では最も多かったのがJR武蔵野線で、ついでJR高崎線、東武東上線の順となっている。