岸田文雄首相(自民党総裁)は29日、デジタルや人工知能(AI)を活用して農業の生産性向上を図るため、6月に成立したスマート農業法に基づく支援制度を創設する方針を表明した。視察先の山梨県北杜市で記者団に明らかにした。首相はこの日、同県内で視察などを精力的にこなしており、政策アピールと地方重視の背景には再選を目指す秋の党総裁選があるとの見方もある。

首相は令和7年度から5年間について「農業構造転換集中対策期間」とする考えを説明。7年度予算の概算要求に向け「新たな支援措置を具体化していきたい」と強調した。スマート農業法はロボットやデジタル技術を農業に活用することを促す目的で、スマート技術導入を図る生産者に対する融資での優遇措置などを盛り込んでいる。

首相はこれに先立ち、デジタル管理によるトマト栽培に取り組む企業を視察。同県韮崎市では、生産現場の人手不足対策に取り組む電子部品製造会社の工場を訪れた。

首相は29日、記者団に「地方から厳しい声が上がっていることについては厳粛にしっかりと受け止めなければならない」とも語った。自民の地方組織では派閥パーティー収入不記載事件の対応などを巡り、首相への批判が強まっている。最近は長野県連や横浜市連などの幹部らから退陣を含む党刷新の要求があった。