博多湾の一部を埋め立てた福岡市東区のアイランドシティに、「アイランドシティはばたき公園」の一角を担う「野鳥観察の丘」がオープンしました。渡り鳥の休息場所となる湿地や、観察施設を備えています。福岡市中心部から都市高速道路で20分ほどの距離に、自然とふれあいながら環境のことを学べる新スポットが誕生しました。

「人と自然の共生」を目指して

 福岡市は、アイランドシティ周辺の海域・海岸域(約550ヘクタール)を「エコパークゾーン」と位置づけ、自然環境の保全に取り組んでいます。アイランドシティはばたき公園(約12ヘクタール)は、和白干潟などと機能分担しながら生物の生息空間を創出することを目指し、「人と自然の共生」をテーマに整備が進められています。

 高層マンションなどが立ち並ぶエリアに隣接するはばたき公園。全体の開園は2027年度を予定していますが、今回は17年度に着工した園内東側の約5ヘクタールが野鳥観察の丘としてオープンしました。

 野鳥観察の丘は、雨水がたまってできた淡水湿地を中心に、草原が周囲に広がっています。多様な生き物がすみ、シギ・チドリ類といった野鳥が飛来します。

多くの野鳥がやって来る湿地

 警戒心が強い野鳥の生息環境を守るため、湿地エリアは人の立ち入りを制限。一方で、野鳥を刺激することなく間近で見られるように、湿地を見渡せる高さ7メートルほどの丘に観察施設2か所を整備しました。施設の壁面には小さな窓があり、湿地で羽を休める野鳥の様子などを、そこからのぞいて観察できます。

 園内の管理事務所にはネイチャーガイドが常駐し、疑問や質問に答えてくれます。また、野鳥観察に用いる双眼鏡や望遠鏡、観察用ルーペは無料で貸し出しています。

 セイタカシギ、オオヨシキリ、コオイムシ、ギンヤンマ……。公園のリーフレットでは、湿地で見ることができる様々な生き物を紹介しています。市によると、湿地では鳥類63種類、水生昆虫などの底生動物63種類、植物121種類が確認されています。時期によって、絶滅が危惧される渡り鳥・クロツラヘラサギも飛来するそうです。

 4月24日に行われたオープニングセレモニーで、高島宗一郎市長は「都心部の近くにありながら野鳥などが観察できる。ゆっくりと心を休める場所が一つ増えた。みんなに愛される公園になってほしい」と期待を示しました。

 アイランドシティはばたき公園の総事業は約28億円です。今後、芝生広場や遊具が整備され、27年度までに順次供用が始まります。

自然の大切さを体感する場に

 オープンを祝って5月5、6日には、工作ワークショップや観察会が開催されます。ワークショップは両日9〜16時、伐採木で作るバードコール、押し花をあしらった定規など4種類の工作(参加費は各300円)を実施。観察会(参加費300円)は両日10時と13時30分から1時間程度、湿地にいる生き物をガイドと一緒に探します。

 定期的なイベントも計画しており、自然環境の大切さを発信していきます。

◆バードウォッチング(毎月第3土曜の午前)
 季節に応じて飛来する様々な渡り鳥を専門家と観察します。

◆湿地の生き物講座(毎月第3土曜の午後)
 トンボ、ゲンゴロウなどを題材に生態を解説。実験や体験を通して生き物への理解を深めます。

◆自然環境の保全体験(毎月第3日曜の午後)
 生き物の生態調査などを体験し、生息環境の保全方法などを学習できます。

 イベントの詳細などは公園のホームページで確認できます。

 5月10〜16日は愛鳥週間です。新たに誕生した「野鳥観察の丘」に出かけて、すぐ身近にある自然にふれてみませんか。