SBSテレビ「LIVEしずおか」の中で、2024年3月19日から22日まで4回シリーズで放送した「なくなる学校の音」。子どもが少なくなり、静岡県内でも多くの学び舎がその役目を終える中、島田市の伊太小学校の閉校までを記録し、「学校が地域からなくなるとはどういうことなのか?」を「音」から考えるという企画でした。

私たち取材スタッフが、伊太小学校周辺の住民に「閉校したらなくなってしまう物とは何だと思いますか?」と尋ねたところ、多くの人が「子どもたちの声」と答えました。“音を残す”は放送局としてできる事の一つかもしれないと考え、撮影が始まったこのシリーズ企画は、放送後、伊太小学校の児童の保護者や伊太地区に住む人たちから大きな反響があり、4回のシリーズを再編集した約10分の“特別編”を2024年3月25日に行われた閉校記念式典で流して頂きました。「取材に協力して頂いた児童や学校関係者に懐かしく振り返ってもらう機会となれば」と制作したVTRでしたが、VTRを見ながら涙するOBの方などもいらっしゃいました。

閉校式典から約1か月。伊太小学校の最後の校長となり、現在は島田市の隣、吉田町の自彊(じきょう)小学校の和田安史校長にインタビューしました。

<伊太小学校 和田安史校長>
Q.閉校から1か月あまりが経ちましたが…
「閉校から時間が経つと、寂しさが増したり、やり残したことを思って後悔するものかと思っていましたが、そこまでないんですよ。赴任した3年前には伊太小学校の閉校は決まっていて、その時から、学校全体の目標を『伊太小っていいね』に定め、最後の閉校の瞬間をイメージしながら、子どもたちも、先生たちも取り組んできたので。そして、保護者にもずっと協力をお願いしてきて。みんな、『やり切った』という感想を持ってくれたんじゃないかと思います。子どもたちに今の気持ちを聞いてないので、本当のところは分からないし、もちろん、寂しさはあると思いますが、次のステージをしっかりと歩んでくれているんじゃないかと思います」

Q.シリーズ「なくなる学校の音」は、なにかを残せましたか?
「放送後、学校からもう何年も離れているOBの方から『閉校する前に学校を見に行ってもいいですか?』という問い合わせが複数ありました。卒業して伊太地区を離れたOBが『放送を見て懐かしくなって…』と、同級生に声を掛けて10人ほどで訪ねてきた事もありました」

Q.学校を訪れたOBはどんな反応でしたか?
「皆さん『懐かしいな』というのが第一声で。『やっぱり閉校は寂しいな』という声も多かった。そして、校内をまわっていると、その当時の先生の話や思い出話をされる方が多くいらっしゃいました。校舎というのは、その当時を思い出させるんですね」

Q.改めて閉校について今、思うことは?
「私の母校はまだ続いているので、本当の気持ちというのは分かっていないのかも知れません。大型連休に伊太に行こうと思います。地域の方は予想していたことではありますが、子どもたちの声が聞こえなくなる寂しさを感じているかもしれません」

約150年の歴史に幕を下ろした伊太小学校。2024年度は放課後児童クラブとして使用され、子どもの声が聞こえる日もありますが、その後の使い道は決まっていません。

静岡県内では2024年3月、伊太小学校をはじめとした8つの公立小学校が閉校しました。少子化の影響で、閉校・統合の流れは加速しています。取材した学校“最後の瞬間”に立ち会う人々は子どもたちや地域に何を残せるかを懸命に考えていました。そして、閉校した後もまだ考え続けていました。