『笑点』『開運!なんでも鑑定団』『踊る!さんま御殿!!』…長く続く番組にはそれぞれ優れたフォーマットやストロングポイントがあるもの。そんなそうそうたる長寿番組にひっそり名を連ねる『ネプリーグ』。気づけばゴールデンタイムに進出して19年。クイズバラエティ番組の隠れた大御所として存在するその理由を、テレビ番組に関する記事を多数執筆するライターの前川ヤスタカが考察する。

『世界ふしぎ発見!』や『世界一受けたい授業』のような長寿番組に共通項はあるか?

この3月もいくつかの長寿番組が終了した。

その筆頭は、足掛け38年の歴史に幕を閉じた『世界ふしぎ発見!』(TBS系列)であろう。コロナ禍による海外取材ができない状況も乗り越え、近時、大胆なリニューアルもしたが、ついに終わることになってしまった。

その後継番組は『世の中なんでもHOWマッチ いくらかわかる金?』だそうである。

タイトルだけ見て『世界まるごとHOWマッチ』(TBS系列、1983年から1990年まで放送されていたクイズ番組)の模倣では?といったネットの声はあるが、昨年12月のパイロット版を見るかぎりでは「コストコで最高額買った人はいくら」とか「大食いの人がくら寿司で限界まで食べたらお会計はいくらに」とか企業タイアップ実験バラエティ寄りのクイズのようだ。

井森美幸がアメリカの豪邸の値段を当てるクイズで「7000兆ドル(98京円=当時)」と書いて大橋巨泉が呆れたあの番組とはだいぶ違う。

他にも、2004年から20年続いた『世界一受けたい授業』(日本テレビ系列)や、レギュラー放送としては2009年から続いていた『ブラタモリ』(NHK)も3月をもって終了。それぞれの番組の事情はあるものの、長く続いた番組が幕を閉じるのはやはり寂しい。

最初から終了時期が決まっているドラマはともかく、バラエティや情報番組に関しては、当然どんな番組でも始めるときは「長く続く番組にしよう」と意気込むものである。

しかし実際に10年単位で続く番組というのはなかなか現れない。
今回は長寿番組の共通項を軸にその秘訣について考えてみたい。

もちろん共通項を洗い出したところで、その通りやれば長寿番組になるというわけではない。

またすべての番組が「長く続くこと」だけを望むわけでもないだろう。クオリティを保てないならば終わるという決断を下した番組も数多くある。

しかしながら何かしらのヒントになるのではないかと思う。

 優れたフォーマットか? タレントのパワーか?

まず長寿番組のパターンとして、大きく二つにわけられる。

一つは番組フォーマットが優れており「偉大なるマンネリ」として出演者が変わってもフォーマットにのっとって続く番組。もう一つは中心となるタレントのパワーが長く継続していてメイン出演者は変わらないが、企画はどんどん変わっていく番組である。

前者のパターンに当てはまる典型は『笑点』(日本テレビ系列)『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系列)『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)といった番組、後者だと『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系列)『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系列)『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系列)がイメージしやすい。

双方によしあしはあり、前者のパターンは一度視聴者に定着してしまえば強いが、強固なフォーマットを変えることが難しく飽きられると立て直しがきかない。

後者はタイムリーに企画を投入できるので時代に合わせやすいが、タレントのパワーやキャラクターに依存するため、そのタレントの勢いが落ちるとこれまたどうしようもない。

『踊る!さんま御殿!!』や『マツコの知らない世界』は? 

これもすべてかっちり分類できるかというとなかなか難しく、たとえば『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系列)や『マツコの知らない世界』(TBS系列)は明石家さんまやマツコ・デラックスがいないと成立しない番組だがフォーマットは決まっていて、司会者以外の出演者が次々変わっていくことで鮮度を保っている。ある意味ハイブリッド型である。

一方『行列のできる相談所』(日本テレビ系列)のように出演者も企画も流動的に変わっているようなパターンもある。番組開始当初とはやっていることも出ている人もまったく変わっていて、今はそもそも法律相談すらしていない。

それをどう組み合わせるかは番組ごとの匙加減によるが、「フォーマットの強さ」あるいは「タレントの強さ」を前提に「時代に合わせる柔軟性」をどう確保するかが重要ということである。

ブームより「絶妙な安定性」も長寿番組の秘訣

そしてもう一つ要素をあげるとすれば安定性である。人気は集めなくてはならないけれど、劇的にブームになりすぎてはいけない。

ドカンとブームが来る番組はどうしてもそのピークが基準になり「パワーが落ちた」とか「おもしろくなくなった」とか「視聴率が低下傾向」とかいろんなことを言われがちである。

そうすると焦って変なリニューアルをしたりと墓穴を掘ることになる。

1社提供の番組は割と長寿が多いといわれるが(たとえば塩野義製薬『ミュージックフェア』(フジテレビ系列)は1964年から60年、資生堂『おしゃれ』(日本テレビ系列)シリーズは1974年から50年の歴史)、これもスポンサーの求めることや、提供したい価値観が明確で、いろんなことに一喜一憂せずに番組が作れるというところからであろう。

かならずしも1社提供=長寿とは限らないが、作り手の心の平安は番組の安定にもつながるというのもこれまた真である。

『ネプリーグ』を長寿番組に押し上げたネプチューンの貢献

そんな中、こういった長寿番組の話題ではあまり話題にのぼらないステルス長寿番組がある。

それは『ネプリーグ』(フジテレビ系列)である。

みなさんは『ネプリーグ』がゴールデン進出後19年、深夜時代も含めると21年の歴史をすでに持つことにお気づきであろうか。なんかずっとやっているなという意識はあるだろうが、そこまで長いとは思っていない人が多いのではないだろうか。

しかし今回の『世界ふしぎ発見!』終了により、『ネプリーグ』が、放送中のクイズ番組の中で最長寿番組となってしまった。

『ネプリーグ』はとにかくフォーマットが変わらない。細かいリニューアルはなくはないが、ファイブリーグ、ファイブボンバー、トロッコアドベンチャーなどはいまだにほぼ毎週やっている。

やることがマンネリで、出演者も同じで、しかもクイズ番組だとかなり飽きられそうだが、そこが飽きられないのはフォーマットのできのよさに加えて、解答者としてのネプチューンの絶妙さがある。

ネプチューンの面々はそれぞれ勉強しすぎたり、しなさすぎたりすることなく、適度にチームを救い、適度にチームに迷惑をかける。年齢を重ねているにもかかわらず、毎度変わらずハラハラさせてくれるし、名倉潤は「ほんまゴメン」とファイブボンバーで謝る。この匙加減が素晴らしいのだ。

TVerのお気に入り登録者数では計りきれない番組の価値

そしてマンネリであるがゆえに爆発的に人気があるわけではない。これもいい。

『ネプリーグ』は月曜の夜を刹那的に楽しくするのが役割で、毎回やっていることは大して変わらない。そしてネットニュースになるような大事件が起きるわけでもない。なので見逃したからといってわざわざ動画配信を見る人は少ない。

TVerのお気に入り登録者数は直近で10.4万人。ちなみに同じネプチューンが出る『しゃべくり007』(日本テレビ系列)のそれは237万人である。

こうしてあらためてみていくと長寿番組の秘訣である「フォーマットの強さ」「タレントの強さ」「安定性」を『ネプリーグ』はすべて兼ね備えている。

当初、裏番組の競合が『関口宏の東京フレンドパークⅡ』(TBS系列)だったように、誰もが憂鬱な月曜日の夜には何も考えないで楽しい番組が見たいもの。ネプチューンの体力が続く限り、長寿番組として変わらずにいてほしい。

我々は何にも変わらない、いつもの『ネプリーグ』を見続けたいのだ。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太 写真/shutterstock