[アジア予選]日本 1−0 北朝鮮/3月21日/国立競技場
北朝鮮との実力差は歴然だったが、日本は苦戦したのはなぜか。
ワールドカップのアジア2次予選という大事な試合で、1−0という最小スコアながら最低限のノルマは達成した。しかし、FIFAランキングで日本は18位、北朝鮮は114位。技術も経験も明らかに日本の方が上だ。三笘薫、伊東純也の2枚看板を欠いていたとはいえ、90分で1点しか奪えなかったのは正直物足りない。
唯一、褒められるシーンは前半早々に奪った先制点だ。
左サイドで前田大然がプレッシングからボールを奪うと、田中碧のクロスを堂安律がヘッドで折り返す。南野拓実のシュートのこぼれ球を拾った堂安が再び、折り返したボールを、田中が右足で蹴り込んだ。
運動量でも気迫でも北朝鮮を圧倒し、波状攻撃でゴールを奪い切る。このシーンを見た時、「今日はたくさんゴールが見れそうだ」と思った。
しかしその後、日本の勢いは消えた。
前半に訪れたビッグチャンスの一つでも決めていれば、展開は変わっていたかもしれない。その点で言えば、堂安がキーパーとの1対1のチャンスを決め切れなかったことが悔やまれる。ただし、その堂安はノーゴールだったことを差し引いても、日本の攻撃陣を引っ張って“違い”を見せていた。1アシスト止まりだが、この日のMVPなのは間違いない。
後半、一進一退の展開となったのは、「1点差」で試合を折り返したからだ。北朝鮮に「まだ望みがある」と思わせたが、北朝鮮の武器はカウンターのみ。海外組を集めて迎えたホームゲームで、北朝鮮にペースを与えずに試合を運ぶべきだったが、それができなかったのも物足りない。
最終ラインに冨安健洋がいれば、全体的にもっと安定していたかもしれない。後半途中、森保一監督は、守田英正に代わって遠藤航をピッチに送り込んだのも、試合運びに不安を感じたからだろう。
選手の個々のパフォーマンスを見れば、総じて良くもなければ悪くもない。気になったのは前田や菅原由勢の精度の低さ、そして橋岡大樹の空回りしたプレーだ。
橋岡の積極的な仕掛けを「思い切りの良いプレー」と見るかどうか。しかし、私の目には「力任せのプレー」に映った。右サイドバックは酒井宏樹を超える人材は出ていないが、左サイドバックも長友佑都を復帰させたように、相変わらずの人材不足だ。しつこいようだが、はやく旗手怜央を左サイドバックで試してみたい。
つまり、北朝鮮戦をひと言で総括すれば、レギュラー組を驚かせる選手の台頭はなかったということだ。
次のアウェー戦。平壌での開催が中止となったのは日本にとってポジティブな材料だ。ホームで北朝鮮の圧力にのまれるのだから、アウェーのしかも平壌だったらさらに深刻な事態になりかねない。
【PHOTO】日本代表の北朝鮮戦出場16選手&監督の採点・寸評。及第点を上回ったのは4人、最高点は決勝弾の田中碧
今回は狙いどおりの「1−0」ではなかったが、次は狙いどおりに手堅いサッカーで勝利を目ざす必要がある。その点で言えば、なおさら試合運びのうまさが求められる。
次のアウェー戦のスタメンは、私が監督ならば、次のような顔ぶれになる。
FW:上田綺世
2列目:南野拓実、久保建英、堂安律
ボランチ:守田英正、遠藤航
最終ライン:伊藤洋輝、谷口彰悟、板倉滉、毎熊晟矢
GK:鈴木彩艶
第1戦のスタメンからの変更点は、町田浩樹→谷口彰悟、菅原由勢→毎熊晟矢、前田大然→久保建英だ。中盤の左サイドには前田ではなく南野を置く。
それにしても、森保監督はなぜ第1戦で前田を起用したのか。いまだに疑問が残る。
前田のパフォーマンスは決して悪かったわけではない。先制点の起点にもなったし、スピードを活かした激しいチェイシングも何度も見せていた。彼が持てる実力は十分に発揮されていたと思う。
しかし、4−2−3−1の左サイドはあくまでも攻撃的なポジション。前田の本職はフォワードで、守備的な選手というわけではないが、よほど戦術的な理由がないかぎり(例えば対峙する選手をマークしなければいけない場合など)、攻撃面で“違い”を作れる選手を優先して使うのがセオリーだ。
前半、サイドの崩しはできていたが、最後の精度を欠いた。言い換えれば、前田がボールを持った時、堂安と南野のコンビネーションのようなプレーはそこまで期待できなかった。
かつて守備力の高いフォワードが「DFW」とネットで騒がれた。これはDFとFWを掛け合わせた造語で、代表的な選手は鈴木隆行、岡崎慎司などだ。守備意識の高さという共通点があるだけに、前田も受け継いでいるように見える。しかし、彼らとの違いは、攻撃面での存在価値にある。
鈴木はポストプレーができたし、岡崎は周りとのコンビネーションで崩せる技術があった。それに対して、前田はどうだろうか。
彼の武器はチェイシングとスピードだが、攻撃のワンピースとして攻撃に絡んでいる際のプレーをどこに求めるか。スピードはあるが、三笘や伊東のような仕掛けの反復もまだまだ少ない。
ディフェンダーからしたら、仕掛けてこない選手は怖くない。警戒しても三笘や伊東は仕掛けてくる。堂安も何をしてくるか分からない怖さがある。久保は最後のところで必ず仕掛けてくる。南野は周りを活かすコンビネーションとパスセンスで、最後のアクセントをつけられる。
前田はエリアに入ってくるスピードは武器だが、ボールを持った時にその武器をまだ活かし切れていないように感じる。
サイドの役割として、守備の切り替えの速さを重視するか、攻撃に比重を置くのか――。アウェーの第2戦では、守ってカウンターというシーンが増えるかもしれない。より慎重な試合運びが求められるが、それでも主導権を握って勝ち切るためには、最後の精度も必要だ。
前田か、南野か、中村敬斗か。これまでの流れや序列を考えれば、中村が使われる可能性が高いだろう。
三笘不在の左サイドをどう埋めるか。そのテーマを考えるうえでも、第2戦では左サイドの崩しに注目したい。
チームとしての目標は勝つこと。そして自分たちで意図的にボールを動かし、試合を支配し、ピンチらしいピンチを与えない。そんなサッカーをアジア2次予選でできなければ、最終予選でも、本大会でもできるはずがない。アウェーの地で、一枚岩となって北朝鮮を叩きのめす日本を見せてほしい。
【PHOTO】激戦必至の北朝鮮戦。国立に集まり大声援で選手たちをサポートした日本代表サポーター(Part1)
なお、本田泰人氏の北朝鮮戦の選手・監督の採点は以下のとおり。
GK
23鈴木彩艶|6.0
DF
2菅原由勢|6.0
(74分 14橋岡大樹|6.0)
4板倉滉|6.5
15町田浩樹|6.0
21伊藤洋輝|6.0
MF
5守田英正|6.0
(58分 6遠藤航|6.0)
8南野拓実|6.0
(74分 18浅野拓磨|6.0)
17田中碧|6.0
10堂安律|6.5☆MOM
(74分 3谷口彰悟|6.0)
11前田大然|6.0
FW
9上田綺世 | 6.0
(81分19 小川航基 |−)
監督
森保一|6.0
【著者プロフィール】
本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。
【記事】「絶対してはいけないプレー」堂安律はなぜ味方を叱責したのか「終わってから話もしました」
【記事】ハードワーク、だけじゃない。攻撃でも違いを見せた前田大然が、北朝鮮戦で打った布石。フル出場は指揮官の信頼度が高まった証拠だ
[本田泰人の眼]前田の先発起用は疑問。持てる実力は発揮していたが...MOMは“違い”を見せた10番
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