ベルギー2部リーグは優勝、準優勝チームが1部リーグに自動昇格し、残る1枠を3位から6位のチームがプレーオフで争う。残り2節でデインズは勝点47の5位。直近4試合で1分け3敗となったことにより、自動昇格は厳しくなったが、プレーオフを狙える好位置にいる。
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 3月30日、ズルテ・ワレヘムとの白熱のダービーマッチを無事に終え、ひと息付いた飯塚晃央CEO(最高経営責任者)にKMSKデインズ のクラブ戦略を伺った。

 ACAフットボール・パートナーズはデインズ以外にも、スペイン・マラガに本拠地を置くトレモリーノス(スペイン5部リーグ相当)の経営権を持っており、両クラブ間の人材交流を積極的に図ろうとしている。

「私たちはトップチームの選手年齢比率を決めています。デインズは『若手層』『ミドル層』『28歳以上の層』の比率を3分の1ずつにして、『ミドル層』のカテゴリーにいる選手にキャプテンを任せたり、チームリーダー役を担ってもらったりしています。トレモリーノスに関しては、来季からトップチームの23歳以下の選手を60%まで引き上げて、若手選手を育成するクラブに特化しようと思っています」(飯塚CEO。以下同)

 スペインでは地域のトップユースアカデミーが競い合うリーグ戦がある。アンダルシア地方のトップリーグに所属するトレモリーノスのU-19チーム『CDサン・フェリックス』は、セビージャ、ベティス、グラナダ、カディスといった有名どころと互角に渡り合い、中位から上位の順位に付けている。

「サン・フェリックスが高いレベルのユースリーグ(Division de Honor Juvenil de Futbol)でプレーすることで選手の育成をしつつ、U-23主体のトップチームがシニアのリーグ戦でしっかり挑戦できるようにする。その中から良い選手をデインズに連れてきて、ベルギーリーグでプレーしながらさらなる成長を促します」
 
 デインズのアカデミーに関しては、「U-6からU-18チーム、セカンドチーム、トップチームを一貫したストラクチャーの中に収める、しっかりとしたストラクチャーを作った」のだという。

「若い選手がU-18からトップチームに上がるプロへの段階をいかに踏むか、そこを我々のアカデミーでは特に意識しています。デインズのアカデミー・ダイレクターを務めるワウター・アルツ氏は、セルクル・ブルージュのU-21チームの監督だった経験を持つ『トランジション(ユースからプロへの移行)型コーチ』でもあるんです」

 デインズのスポーツ面でのストラクチャーを作ったアドリアン・エスパラガSD(スポーツ・ダイレクター)がメディアやサッカー・カンファレンスでクラブの取り組みを話す機会が増えてきた。

「我々が今、取り組んでいる『ストラクチャーの投資』をアドリアンが話すと、ベルギーのトップクラブ、他国の有名クラブの関係者が『このレベルの投資をベルギー2部リーグのクラブがやっているのか』と大変驚かれます。

 例えばスタジアムの中に最新機器の揃ったフィットネスジムを作り、ストレングスのデータを測るためのソフトウェアもしっかり取り入れた。そして『コンディショニング、ストレングス専門のデータアナリスト』を雇い入れ、『ストレングス・コンディショニングコーチ』と『リハビリテーションコーチ』の2人をサポートする仕組みを作りました。彼らが選手のデータをパワーBIで集計し、毎日ダッシュボードでグラフ化し比較しています。もしかしたらベルギーのトップクラブですらやってないかもしれないレベルのことを、デインズのような小さなクラブが取り組んでいるんです」
 選手獲得のスカウティングは、クラブの規模としては破格の9人体制。うち3人がフルタイム、残る6人がパートタイムだ。

「私たちはポジションごとに、デインズに来てほしい選手の定義を設けており、スカウト一人ひとりに担当する国、リーグをアサインして、定義に合った選手をウォッチさせる。半年に1回ある移籍市場に向けて、スカウトは自分が担当する国、リーグの選手でシャドーチームを作り、それを1つのシャドーチームにまとめる。これが移籍市場の開く1か月前には出来上がります。これを元に監督と話し合って、優先順位を付けて交渉に入っていきます。

 そこから先の交渉は生モノですので、リスト化した選手が全員来るわけではありません。移籍期間中に有力な選手が出てくることも当然あります。そのときは最低でも3人のスカウトの目で選手を見て定性的(数値化できない要素のこと)なレポートを書かせ、さらに『A+、A、B+、B』のようにランク化して、その総合値の高い選手を獲得対象にします。

 要はスポーツ・ダイレクターが独断と偏見で決めるのではなく、複数の目で見て『定量的(数値化できる要素のこと)な指標』『定性的な指標』を合わせた総合値で決める。後はそれだけの給料とか移籍金を払うに値するかどうかをマネジメントサイドが判断をして、獲得交渉を始めるゴーサインを出す――。そういうプロセスを作っていることを、カンファレンスで話したりしています」

 昨年秋、最下位に落ちたチームをベテラン指揮官マルク・グロスジャンの手腕によって、昇格プレーオフ進出寸前まで立ち直ったのが、飯塚CEO(当時はCSO)の就任1年目。しかし2年目、16チーム12位と低迷気味だった昨秋に大鉈を振るい45歳の働き盛り、ハンス・ソマースを監督に任命した。

「私たちはもともと3年プラン(=1部昇格)を立てていて、今は2年目なんです。ただ、今季は6位を狙えるだけの戦力が揃った中、リーグ後半とその先のシーズンを見据えたとき、我々の目ざす方向性との違いが生まれていました。グロスジャンさんは本当に素晴らしい指導者ですし、私たちを救っていただき本当に感謝しています。しかし、目標とする6位以内に入って昇格プレーオフに出ることを鑑みると、デインズは柔軟な采配をすることのできる、勝負勘のある監督に切り替える時期に迫っており、昨年11月半ばからソマース氏に監督をお願いすることになりました。
 
 今(2024年3月30日取材時点)、少なくとも昇格プレーオフ進出の可能性は高まっており、最高のシナリオで進めば2位になって直接昇格できるかもしれません。ソマース監督は手持ちの選手をやりくりして、相手を分析してウイークポイントを突くことのできる、勝負強い指導者です。眼の前のチャンスを掴まない手はありません。プランを1年前倒ししてシーズン大詰めを戦い抜く覚悟です」

 最下位に落ちて四面楚歌になった1年余り前。それが今、デインズ市、サポーターとの関係が良好となり、2部リーグでの快進撃と小クラブとは思えぬストラクチャーから、デインズはベルギー国内を驚かせている。その成果の一つが3月30日、ズルテ・ワレヘムとのダービーマッチに4400人を集めたこと。それまでの今季最高1761人の実に2.5倍もの観衆が集まったのだ。

「ここらで一つ、デインズを応援しに久しぶりにスタジアムにでも行ってみるか」

 そんな市民が多かったと飯塚CEOは喜んでいた。

取材・文●中田 徹

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