4月16日にU-23アジアカップの初戦を迎えるU-23日本代表。パリ五輪のアジア最終予選を兼ねた戦いは中国との一戦からスタートする。

 試合前日には日本と同じB組に属するUAE、韓国、中国の監督が一堂に会する記者会見が行なわれ、現地時間16時から冒頭15分のみの公開で1時間半のトレーニングが実施された。

 その練習前に大岩剛監督が囲み取材に応じ、今大会のキャプテンと副キャプテンを発表。チーム立ち上げ当初から腕章を巻く機会が圧倒的に多かったMF藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)がキャプテンとなり、副キャプテンはDF内野貴史(デュッセルドルフ)、DF西尾隆矢(セレッソ大阪)、MF松木玖生(FC東京)、MF山本理仁(シント=トロイデン)が指名された。

 2022年3月にチームが立ち上がってから、大岩監督はいかなる活動でも明確にキャプテンを指名していない。22年3月下旬のドバイカップでは藤田が2試合で務めた。U-17日本代表で主将を任されていた半田陸(ガンバ大阪)も腕章を託されたが、基本的には藤田や山本が務めることが多かった。

 それでも昨年9月のU-23アジアカップ予選でも指揮官が「僕らはずっと決めていない。試合ごとに決めていく」というスタンスを崩さなかったのは、誰もがリーダーとして振る舞えるようになって欲しい想いがあったからだ。

 藤田と山本を明確にキャプテンとしなかったのはそのためで、一人ひとりの自覚と責任を促す上で敢えて指名をしなかった。そして、今回のU-23アジアカップではついに答えを出し、チームリーダーをはっきりと据えることを決断。チーム発足当初から類まれなリーダーシップを発揮してきた藤田をキャプテンとし、それを支える形で内野、西尾、松木、山本を副将とした。
 
 藤田がキャプテンに指名されたのは必然の流れで、忌憚のない意見を誰に対してでも言えるメンタリティはリーダーの資質に相応しい。では、サポートする立場となった4名はなぜ指名されたのだろうか。

 副キャプテングループには2つの共通点がある。1つ目が藤田と同じく、チームのために嫌なことであってもしっかり意見を言える点だ。そして、2つ目がチームをよく知っているという点だろう。この4人は立ち上げとなった22年3月下旬のドバイカップに出場している。いわゆる古参のメンバーであり、以降も継続して代表に招集されてきた。

 例外として松木はU-20ワールドカップがあったため、23年の上半期はひとつ下のU-20世代の活動に専念。半年以上、大岩ジャパンでの活動実績がなかったが、冨樫剛一監督が率いるチームでキャプテンを務め、今季からはFC東京では若干20歳でキャプテンを任されている。根っからのリーダー気質で、高校時代から先輩であっても本音で言葉を紡いできたタイプ。そこに遠慮はなく、チームがよくなるために嫌われ役になることを厭わなかった。そうした意味でも今回の副キャプテン就任は納得がいく。

 その一方で山本と西尾は立ち上げ当初からチーム内で重要な役割を担っており、前者は中盤の要、後者は最終ラインの柱として精神的な支えとしてチームをバックアップしてきた。そのため、2人の副キャプテン就任も自然な流れであり、成るべくしてなったと言えるだろう。
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 そして、最後に触れる内野に関してはちょっと意外な人選にも見える。だが、決してそんなことはなく、まさしく適材適所だ。

 内野は努力家であり、自分に対して厳しい。その上で仲間に対して盛り上げ役を担いながら、厳しい言葉を投げ掛けられる。スタートからピッチに立てなかったとしても決して腐ることはなく、自ら役割を見つけて仲間のために汗を掛けるメンタリティを持つ。

 そして、何より監督と選手の間に入って繋ぎ役ができるタイプで、印象的だったのが昨年9月のU-23アジアカップ予選だ。初日のトレーニングでは全員が集まっておらず、13人のトレーニングになった。その際に誰よりも前向きな声をかけ、スタッフと選手の間でモチベーションの維持に努めたのだ。

 まるでコーチのような振る舞い。当時、これについて内野に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
 
「絶対にコーチからだけではパワーがチームに回らないと思うし、ピッチでやっている人が言うことが一番伝達として早いと思った。それは今までの経験とかもあるので、ピッチの中からこういうトレーニングを1日1日大切にして、ちゃんと集中して行なう。そこがちょっと最初は欠けていたので、それはチームに取り入れるために僕が声をかけました」

 橋渡し役もできるし、ピッチ内外でチームのために戦える。そんなメンタリティを持った選手は稀有で、今回の23人では唯一無二の武器だ。正式に役職がついたことで内野の自覚はより高まったはずで、今まで以上に仲間のために戦ってくれるに違いない。

 異なる道を歩んできた4人だが、持っている性質は同じ。仲間のために戦えるという点に尽きる。藤田をバックアップするには最適な4人で、約1か月の長期決戦を考えればこれほどまでに頼もしい人材はいないだろう。

 大岩監督から託された責任と立場は重いが、必ず日本の力になるはずだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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