2月に横浜F・マリノスからスイスリーグのセルベッテへ買取オプション付きのレンタル移籍をしている西村拓真。スイスにわたり2か月余りがたった。どんな時間を送っているのだろう?

 セルベッテは首位ヤングボーイズと優勝争いをしているが、レギュラーシーズンの終盤に4試合連続勝ち星に見放され、流れを取り戻すのに苦労していた。今季は残留争いをしているバーゼルとの32節は、きっかけを掴むために勝利が是が非でも欲しいところだったが、相手の堅守を崩しきれず、1−2で敗れている。

 31節のチューリッヒ戦に続きべンチスタートとなった西村は、この試合は8分から途中出場。負傷したFWエンゾ・クリベリに代わってFWの位置に入る。ピッチに入った瞬間から、ダッシュで相手に向かってプレスをかけていく。直後の9分には左サイドからのクロスにファーポスト際で打点の高いヘディングシュートを見せた。ゴール右へと惜しくも外れたが、数分後には左サイドのスペースに飛び出して味方からのパスを引き出すなど、《らしい》ダイナミックな動きを見せていた。

「しばらくは最初から出てましたけど、今日と前回とは(ベンチスタート)。結果という部分では監督に求められてると思います。けどその中でも僕にしかできないところは多くあると思うんで、自分の長所をずっと出し続けて、より良い選択肢になれるようにしていきたいです」
【動画】セルベッテ西村拓真がルツェルン戦で2ゴール!
 精力的な前線からの連続プレス、一瞬のスキをついてスペースに飛び出すタイミングとそのスピード、ゴール前で相手を外す動き出しの巧みさなどらしい動きを随所で披露している。空中戦でも負けていない。ただ決定的なシュートチャンスはほとんど訪れないまま試合が終わってしまった。

 一度、前半途中にセンターからサイドに流れてプレーしようとしていた西村に対して、レネ・ヴァイラー監督がコーチングゾーンから「もっとセンターに入ってプレーして」といったジェスチャーを送っていた。

「点を取れる位置にいてほしいってことだと思いますけど、ただ全然ボールが来ないんで。まあしようがない」
 
 FWは時にジレンマを抱えながらプレーしている。相手守備をひきつけ、ゴールの可能性が高くなるペナルティエリア付近に陣取ることの大切さはわかる。でもあまりにもボールに触る機会が少ないままだと、リズムも勢いも出にくくなる。西村はそのあたりで試合の流れに絡みつつ、ゴール前にもしっかりと残るためのやり取りを探っているようだ。

「我慢といったらあれですけど、やっぱり相手との駆け引きがあるので、例えば僕がサイドに流れたら誰かがセンターに入ったりとか、いろいろ考えてやっていきたいです」
 
 レギュラーシーズン最後のグラスホッパー戦を1−0で勝利したセルベッテ。ここからは1位から6位までのチーム同士が総当たりで当たるプレーオフに突入する。残りのシーズンに向けて、西村はどのように自分を高めていきたいと思っているのだろう?

「もう1試合1試合、目の前の試合に対して、全力で臨みたいです。やっぱり優勝がチームの目標でもあるんで。そこに自分が強く貢献していきたいなと思います」

 1点で流れは変わる。西村ゴールの連続で現在3位のチームを2位、さらには首位にまで導いてほしい。

取材・文●中野吉之伴

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