「負けてもおかしくなかったなかでの引き分け。次につなげたいです」

 シュート数で6対18と圧倒されながらも、アウェーで貴重な勝点1を得られたのは、韓国代表GKの幾度ものビッグセーブがあったからに他ならない。

 6月26日、湘南ベルマーレはJ1第20節で川崎フロンターレと敵地で対戦し、1−1で引き分けた。

 川崎のハイプレスとポゼッションを両立する完成度の高いサッカーに苦戦したなかで、特に活躍が際立ったのが湘南の守護神ソン・ボムグンだ。15分、山内日向汰に最終ラインの背後を取られるも、ギリギリのタイミングで前に出てカバー。16分に山田新と脇坂泰斗の立て続けの決定機を防ぐと、21分の山田の至近距離からのシュートにも見事に反応した。

 62分にはGKにとってノーチャンスとも言える形で失点したが、その後も安定したプレーを見せた。チームはその後、78分に田中聡のゴールで同点とする。21歳レフティの強烈なミドル弾はインパクト抜群だったが、背番号1も負けず劣らずの活躍ぶりだった。
【動画】川崎戦のソン・ボムグンのセーブ集
 ソン・ボムグンは試合後、安定感を発揮できた要因を次のように分析した。

「序盤の川崎のテンポがすごく早くて、そこについていくために準備を早くしなければいけなかった。それがいつも以上に良い準備につながって、安定したセービングができたのだと思います。また、最近の練習では予測して動くのではなく、ボールの軌道や回転に対して反射的に動けるようにトレーニングを重ねています。それが実戦で出ました」

 試合を通して輝きを放ったソン・ボムグンだが、特に9本のシュートを浴びながら無失点に抑えた前半の出来は圧巻だった。劣勢の45分間を、この26歳は最後尾からどのように見つめて、また何を意識してゴールマウスに立っていたのか。

「守勢に回る時間が長かったので、失点をしないことを重点的に考えました。守備陣のみんなが良いポジションに立ってくれたので、危険な場面を何度も回避できた。ディフェンダーたちと協力して守れたと思いますし、お互いのプレーがそれぞれの力になりました」

 5月19日の第15節・アルビレックス新潟戦(2−1)以来、1か月以上、勝利から遠ざかっている湘南。その間、数々のスーパーセーブを見せながらも失点し続けている守護神にとって、もどかしい時期が続いている。

 そんななかでもソン・ボムグンは「期待していただいている声も届いている。より成長して、良いプレーを見せたい」と前を向いた。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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