これは、負ける。EURO2024の決勝トーナメント1回戦でイングランドが後半アディショナルタイムに入っても0-1とリードされ、スロバキアの堅守を崩せないタイミングで、正直、そう思った。

 今大会、優勝候補の筆頭と目されながらグループリーグで本領を発揮できず、スロバキア戦でも大苦戦。イングランドは攻め込みながらも敵の中央のブロックを崩せずにいた。

 ジュード・ベリンガム、ハリー・ケインをはじめ、世界トップクラスのタレントを揃えながらチームとして今ひとつ機能していない感のあるイングランドを見ていると、EURO2004のイングランドをふと思い出す。

 当時のイングランドにも、デイビッド・ベッカム、スティーブン・ジェラード、フランク・ランパード、ウェイン・ルーニー、マイケル・オーウェン、ジョン・テリーなどスーパースターを擁していた。しかし、魅力的なフットボールを展開するどころか、どちらかと言えば退屈なパフォーマンスを披露。スベン・ゴラン・エリクソン監督の下、タレント力をチーム力へと昇華できないような状態で、結局EURO2004は準々決勝でポルトガルに敗れた(2-2の末、PK戦で5-6)。

 大舞台に臨むイングランドはだいたい優勝候補の一角に挙げられ、「1966年ワールドカップ以来のビッグタイトル獲得なるか」というフレーズが用いられる。そして、その期待をことごとく裏切ってきた過去がある。
 
 だから、今回もスロバキア戦で終わったと、そう思ったのだ。しかし、スロバキア戦での絶体絶命のピンチをベリンガムが救う。あと30秒で試合終了という局面で、彼はセットプレーのチャンスからバイシクル弾を決めたのである。

 これで息を吹き返したイングランドは、延長に入るとすぐさまケインのヘッド弾で逆転。スロバキアとの激闘を2-1で制し、ベスト8進出を果たしたのだ。こうした勢いはビッグトーナメントを制すうえで重要なファクター。仮に今大会でイングランドが優勝すれば、スロバキア戦が“潮目が変わった一戦”として記憶されるかもしれない。

 準々決勝の相手は組織力に優れたスイス。イングランドがどう戦うか興味深い。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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