『爆ひな’20 powered by FM大阪「なんMEGA!」』2024.3.3(SUN)大阪・なんばHatch

3月3日に大阪・なんばHatchで『爆ひな’20 powered by FM大阪「なんMEGA!」』が開催された。2001年よりFM大阪と関西のイベンター・清水音泉が桃の節句にタッグを組んで行われてきたライブイベント『爆ひな』。2020年は20年目を記念してなんばHatchで実施する予定だったものの、新型コロナウイルス蔓延により開催自粛となり、さらには振替公演(2020年8月20日)もかなわず、一時は無期限延期(払い戻し)に。そんな状況にもめげず、4年の時を経てついに同出演者で開催されることとなった、濃厚さ200%増しの宴の様子をたっぷりと振り返りレポート!

FM OSAKA・山本氏、清水音泉・田口氏、DJ・前田彩名

FM OSAKA・山本氏、清水音泉・田口氏、DJ・前田彩名

開演の時刻になると、まずはFM大阪の人気番組『なんMEGA!』のDJ・前田彩名と、『爆ひな』発起人のひとりであるFM OSAKAの山本氏(ex 名物プロデューサー)や清水音泉の田口氏が登壇。清水音泉と共にFM大阪でロックの深夜番組『EZM』『FUTURE AUDIO 851』『ミッドナイト☆ジャングル』をやっていたことをキッカケに発足した『爆ひな』の足跡やイベントの楽しみ方を語り、いよいよライブは開幕へ。

超能力戦士ドリアン


ド頭から会場を沸かせたのは、超能力戦士ドリアンの3人だ。まずはライブでは使わないはずのドラムになぜか煌々とスポットライトが当たり、「僕はドラム! 今から超能力戦士ドリアンのライブが始まるよ〜!」と話し出す、まさかの幕開け。1曲目の「ゴリラのドラミングーチョキパー」から、やっさん(G.Vo)とけつぷり(G)の2人に加え、ゴリラの着ぐるみ3頭が現れしっちゃかめっちゃか。が、その光景にも慣れたものという様子なのは、さすが『爆ひな』のオーディエンスだ。センターのゴリラからおーちくん(Vo)が飛び出すという、家に帰ったら夢に見そうな光景を経て、続いては自己紹介ソング「いきものがかりと同じ編成」へ。

「(超能力戦士ドリアン!との呼びかけに)興味あるー!」とぶつけ合うお約束の特大レスポンスに続いては、この日のために作ったという新曲(という体の既存曲「天保山」の替え歌)「なんMEGA!」をぶっ放す。前田彩名も呼び寄せ、オーディエンスと一緒に『なんMEGA!』にちなんだNNMGの人文字を行うなど、その盛り上がりは早くもワンマンライブ級!


MCでは「4年経って、(今日の出演者たちは)やっぱり大きい先輩方だなと。でも負けない存在になるよう頑張ります。また次の4年後、絶対売れるから!」(やっさん)と、ふいに熱い決意を口にするのだから、緩急つき過ぎ。「ヤマサキセイヤと同じ性別」では、出演者の段ボール製等身大パネルを客席に投げ込み、ステージに返ってくるまでのレースを行うカオスぶりだ。ラスト「焼肉屋さんの看板で牛さんが笑っているのおかしいね」まで全6曲、オープニングアクト(爆ひなでは「あかりをつけましょアクト」)の概念をブチ壊す濃厚さで、『爆ひな』の成功を確信させるひとときとなった。




岡崎体育


DJブースのみのシンプルなセットに現れたのは、一番手の岡崎体育だ。初っぱなの「Open」では「元気いっぱいですね、このあとめちゃくちゃ盛り上がる箇所があるので、思い思いに踊ってみませんか?」と導き、一気に会場のテンションも加速。にも関わらず、続く「あてはまRing Ring」では「めっちゃイイ感じやねんけど……ちょっと踊り過ぎかな? これからは踊れる人を絞っていこうかと思います。お題に当てはまらない人は突っ立ってて」と、「大阪から来た人」や「木琴叩いたことがある人」などのテーマを繰り出し、最後は「産声を上げたことのある人!」という全員一致のシーンに狂喜乱舞。


曲間には「すぐ塩分を欲するんですよ」とカリカリ梅をつまみつつ、ライブで開発したという「フランスパンゲーム」をお届け。岡崎体育からの「フランス」というコールに続けて「パン!」と手を叩くいわゆる音ゲー。時にフランス以外にも、「焼きそば」や「メロン」などの引っかけを入れ、なかでも高難度なのが「フラン……シスコ・ザビエル」のとき。見分け方は「(岡崎体育が)ちょっとムカつく顔をする」というヒントの後は引っかかる人が激減し、「そんなにムカつく顔してた?」と本人も困惑。という一連のチュートリアルののち、本番では倍速となるもしっかり一体と化したなんばHatch。「全クリよ!」とお褒めの言葉も。


舞台袖では、大物映画監督のようにその様子を四星球・北島康雄(シンガー)が見守っていたようで、「(ライブを見てくれるのは)うれしいんですけど、後からダメ出しあるからな〜」とボヤく一幕も(笑)。「今日は縦ノリの雰囲気やけど、横ノリもしてみよう」と促し、「サブマリン」ではラスタカラーのライティングの下、満面の笑みを浮かべながらシニカルな歌詞を紡ぐ岡崎体育。ピースな雰囲気を保ちつつ、歌詞の中に今宵の顔ぶれの名前を入れる粋な計らいも。さらに「ぶっ飛ばしナンバーいきます!」と続けて「なにをやってもあかんわ」をお見舞いする。華麗なエアギターを挟み、最後は拳を高く突き上げ、「あなたの負のエネルギーを天に飛ばして!」と開放感いっぱいに歌唱。


さらに、ケータリングのカレーライスに添えられたスプーンが極小だったことから、「清水音泉に大きいスプーンを買ってあげたい!」と叫びつつ、ラストの「Q-DUB」での総ヘドバンの絶景に多幸感は止まらない。「『爆ひな』の一員に加われてめちゃくちゃ光栄です! どこまでいっても悪ふざけ、音楽って楽しいもんでしょ。何やってもいいよね! この言霊をなんばHatchに置いていく。いつか必ず『紅白歌合戦』に出場します!」と、漢の宣言を残してステージを去った。

キュウソネコカミ


「11年前はインディーズバンドでした。おかげさまで今はめちゃくちゃメシ食えてるぜ!」と、ヤマサキセイヤ(Vo.G)の絶叫から始まったのはキュウソネコカミだ。ド頭「ウィーアーインディーズバンド!!」から、オカザワカズマ(G)の鮮烈なギタープレイで会場の温度は急上昇。そこからのメジャーデビュー曲「ビビった」に続く流れが最高に痛快で、全員総立ちからのジャンプと勢いは止まらない。

ヨコタシンノスケ(Key)の奏でるメロディアスなフレーズにとことん踊らされる「DQNなりたい、40代で死にたい」では、待ってましたとばかりにフロアへ傾れ込むセイヤ。「ヤンキー怖い」の大合唱が巻き起こり、ライブハウスでキュウソの放つ爆音にまみれる、これぞハッピーの極地!



さらに「社会のしがらみ」のくだり(=さまざまな困ったことを段ボール箱に書き殴ったものにセイヤが突っ込んで粉砕するお約束)が、コロナ禍以降初めて復活を果たした初期の代表曲「困った」では、数え切れないほどの歓喜の声が上がる。この日選ばれたしがらみは、清水音泉の田口氏が遭遇したマッチングアプリ詐欺被害(笑)。ついでに田口氏の連絡先を勝手に公開するなど(LINE「友だち」追加で300人増えたらしい……)ハチャメチャな一方、「コロナのせいで消えてしまったイベントは数知れず。そんななか『爆ひな』は4年越しで復活開催! そんなの世界でも他にはないんじゃないかと思う。よく開催してくれました!」(セイヤ)と熱い言葉も。


ここで思いのほかタイムテーブルが巻いていることが判明し、急きょ疾走感たっぷりに「良いDJ」を投下し、ラストは泣けるグッドメロディにソゴウタイスケ(Dr)の猛ラッシュが効いた「私飽きぬ私」……と思いきや、旺盛なサービス精神で超絶ショートチューン「家」もブチかまし、持ち時間を美しく使い切っていた。


四星球


ライブ巧者だらけの『爆ひな』で、彼らが通常運転のはずがない。北島康雄(シンガー)はキュウソネコカミのマスコット・ネズミくんに扮し、U太(B)は裸オーバーオール姿でグレートマエカワ(B/フラワーカンパニーズ)化。そして盆地テクノパーカーに身を包み、岡崎体育を現したまさやん(G)と、登場から一気に会場の腹筋を崩壊させた四星球。完全に黒子と化したモリス(Dr)の姿に、「(超能力戦士ドリアンと一緒で)僕たちもドラムがいないんですよ〜」(康雄)とのたまう始末。そんなたくさんのツッコミどころもお構いなしに、初っぱな「UMA WITH A MISSION」では、生まれたての馬=康雄が立ち上がる瞬間を応援するため、あっという間になんばHatchが一体化!




感動の瞬間には見渡す限り笑顔満開で、続いては「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」へ。四星球のライブに欠かせない小道具は全てまさゆきのお手製。段ボール製の音符を背負って弾きまくる、目で見るギターソロは彼にしかなし得ないものだ。続いては康雄が退場し、代わりにキリリとした表情で康雄によく似たちょんまげマンが登場した「ちょんまげマンのテーマ」へ。モリスとU太による轟音リズムを支えにしたグッドメロディに会場の温度も上昇しっぱなしで、「ふざけてナイト」では舞い戻った康雄がステージ中を所狭しと駆け抜ける!


さらに2月にできたばかりの新曲「FLAG」をお披露目。「お子様からお年寄りまで楽しめるライブにしたくて。旗揚げゲームを歌にしました」(康雄)と言葉にするも、歌声はヴィブラートの効いた完全ビジュアル系モード。シームレスに続けた「クラーク博士と僕」では、冒頭からシンガロングが湧出!

「好きだとか大事なことは伝わりづらいんですよね。だからこれからどんどん言っていきます! なんばHatchも『なんMEGA!』も清水音泉も大阪も大好きで、大事ですので! 今日ライブできることが本当にうれしいです」(康雄)なんて急に泣けることを叫ぶのだから、四星球のステージは油断ならない。「<ちょっと待って>と思うぐらい<なにやってもあかん>ことが続いて、<ビビった>けど、<生きていてよかった>そんな夜まで、この歌をよろしくお願いします!」と、出演全バンドにまつわるワードを交えてラスト「薬草」へといざなう康雄。


最前で構えるセキュリティスタッフにマイクを向けて困惑させるなど、やりたい放題な一方、底抜けの包容力で大団円へ。曲終わりでは、翌日3月4日が誕生日のまさゆきに、モリスが握った特大サーモン寿司(たっぷりわさび入り)がふるまわれる一幕も。雛人形の<赤いお顔の右大臣>ばりの表情となったまさゆきで、四星球の大狂乱は幕を閉じた。


フラワーカンパニーズ


いよいよオーラスを迎えるなんばHatchへ、フラワーカンパニーズの4人がお出ましに。底抜けに明朗な「行ってきまーす」で口火を切り、鈴木圭介(Vo)のブルースハープや竹安堅一(G)のドライブするギターが会場いっぱいに響きわたる。「はぐれ者讃歌」では真っすぐ伝わる言葉のパワーをひしひしと感じさせ、今年結成35周年を迎える彼らには、初めて耳にしたときからいつまでも消えないフレッシュさを感じずにはいられない。ちょうどこの3月3日リリースだった新曲「ハートのレース」では、ミスター小西(Dr)の鳴らすリズムが場を鼓舞するようで、たくさんの拳が突き上がるのが何とも印象的だ。


「(今日の出演者は)変化球ばっかりだよね! 俺たちが一番真面目。普通のバンドいないじゃん!」(鈴木)

「我々は小道具ってヤツが何も出てこない(笑)」(マエカワ)と笑いつつも、たった数曲でここまで心躍らせるフラカンだって決して普通なんかではない。そしてこの日ならではのお楽しみも。「僕らの曲をカバーしてくれて、僕らの曲よりたくさん流れている!」(鈴木)と促されて再登場したのは、岡崎体育だ。SMBCグループのテレビCMソングでもある「深夜高速」を本邦初コラボレーション! 自身のステージとは打って変わって「緊張しています……」と口にし、敬愛をにじませる岡崎体育。二声のハーモニーで一層増幅する鮮やかな歌世界には、客席も拍手喝采だ。


貴重なタッグを経て、「ライブではめったにやらない久しぶりの歌を」(鈴木)と、1996年発表の「春色の道」を奏でる4人。イントロではグレートマエカワがアコギを弾いたり、ミスター小西がパーカッションを軽快に響かせる場面も。ソウルフルに歌い上げ、いよいよ「最後にゃなんとかなるだろう」でフィナーレへ! ハッピー極まりないバンドアンサンブルを奏で、「『爆ひな』最高!」(鈴木)とステージを後にした4人だった。




こんな特別な夜がこのまま終わるわけもなく、何と今宵の出演者全員でアンコールへ! フラワーカンパニーズの「真冬の盆踊り」で正真正銘のエンディングを飾る。客席へ雛あられを投げ込んだり、ちょんまげマンが再び現れたりと、全員で「よさほい」踊る底抜けの楽しさで大団円を迎えた。最後は前田彩名が「最高のバンド、最高のお客さまに集まっていただけました! 4年越しだったからこそ聴けた曲もあったと思います」と記念すべき『爆ひな』復活の夜を盛大に締めくくった。



取材・文=後藤愛 写真=清水音泉 提供(撮影=オイケカオリ)