◇ウエスタン・リーグ 阪神4―1オリックス(2024年4月17日 鳴尾浜)

 「左尺骨短縮術」および「左肩関節鏡視下クリーニング術」からの復活を目指す阪神・高橋遥人投手(28)が17日、ウエスタン・リーグのオリックス戦(鳴尾浜)で実戦復帰を果たした。21年11月6日のクライマックスシリーズのファーストステージ第1戦の巨人戦(甲子園)以来893日ぶりの対外試合登板で、1回1安打無失点。得意のツーシームで空振り三振を奪い、直球の最速は147キロを計測するなど、完全復活へ大きな一歩を踏み出した。

 高橋遥人が投げる。この瞬間を、みんなが待っていた。893日ぶりとなる対外試合のマウンド。ようやくたどり着いた“職場”で思い切り腕を振った。

 「緊張はめちゃくちゃした。前日の夜、今日一日、結構、ソワソワしていたかなと」

 しばらく遠ざかっていた戦いの場所は、感慨にふける時間を与えてくれなかった。初球、146キロの直球を杉沢に捉えられた打球は投手強襲のライナー。好捕で1アウトを奪い「捉えられたんですけど、アウトになって少し緊張がほぐれた」とひと息ついた。続く山足に右前打を浴びるも、横山聖には8球粘られながら“宝刀”ツーシームで空振り三振。最後はトーマスを遊ゴロに仕留め、駆け足でマウンドを降りた。

 「いろんな人に見に来てもらって。感謝…ありがたいですし、ずっと投げない中でも応援してくださる声は聞こえていたので。投げられているところを見せられて良かった」

 21年に左肘クリーニング術、22年は左肘トミー・ジョン手術、そして昨年は左尺骨、左肩と3年連続でメスを入れるなど入団以来、たび重なる故障に苦しんできた経緯を多くのファン、関係者が知る。この日、早朝からできた球場の開門待ちの列は普段の週末の2倍に迫る約180人。「今日は絶対に見たかった」と関西圏外から駆け付ける人もいた。

 鳴尾浜で地道なリハビリを続けていた昨年12月。どんな時も背中を押してくれた“声”に決意を新たにした。「ずっと応援してくれている人たちがいる。投げられない中でも声援は僕のところに届くので…。自分が復帰しないとそういう人たちが報われない」

 目指すのは支配下返り咲き、そして甲子園のマウンド。だからこそ、この一歩をゴールにはできない。「ストレートの質をもっと上げて…そこが一番。まだまだと思うので、しっかり状態を上げていけるようにしたい」。今後は患部の状態を見ながら短いイニングの登板を複数回重ねステップアップしていく。

 「(奪三振の場面は)真っすぐでまだ勝負をつけられなかったので」。闘争心にも火をつけ、背番号129が復活ロードを歩み始めた。(遠藤 礼)

 ◆高橋遥人の経過◆

 ▽21年11月6日 巨人とのCSファーストS第1戦に6回3失点で敗戦投手。登板中に左肘を押さえるしぐさを見せる。

 ▽11月19日 左肘のクリーニング手術を受けたことを球団が発表。

 ▽22年2月1日 2軍の高知・安芸でキャンプイン。

 ▽2月19日 手術後初めて捕手を座らせて20球の投球練習。トラックマンでは140キロ近い球速を記録。

 ▽4月26日 左肘内側側副靱帯(じんたい)再建術(通称トミー・ジョン手術)を終えたことを球団が発表。

 ▽23年6月16日 左尺骨短縮術および左肩関節鏡視下クリーニング術を終えて退院したと球団が発表。

 ▽11月17日 育成選手として契約。

 ▽24年4月7日 鳴尾浜球場での2軍残留練習でフリー打撃に登板。