◇インターリーグ ドジャース12−2ブルージェイズ(2024年4月26日 トロント)

 ドジャースの大谷翔平投手(29)は26日(日本時間27日)、ブルージェイズ戦でリーグ2位タイとなる7号ソロを放った。昨オフにはFA交渉大詰めの段階でトロント行きのチャーター機に大谷が乗ったという誤報が飛び交い、ブ軍合意間近かとも報じられた。その敵地で移籍後初のプレーとなり大ブーイングで迎えられたが、一振りで黙らせた。勢いづいた打線は19安打12得点で、今季最長の5連勝を飾った。

 大ブーイングをかき消す放物線が右翼へ伸びた。初回、右腕バジットの内角スライダーを、大谷が巧みに捉えた。高く舞った打球は自軍ブルペンで大きく弾み、スタンドへ。本塁打の打球では自己最も遅い打球速度96・1マイル(約155キロ)ながら、37度という高い角度が手伝い飛距離110メートル。「詰まっていてギリギリでしたけど、入ってくれて良かった」と表情を崩した。

 「トロントに来るのは楽しみにしていました。今日も満員に近いファンがいて、選手冥利(みょうり)に尽きる」。平然と振り返ったが、3万9688人をのみ込んだ敵地ロジャーズ・センターは異様な雰囲気となった。

 昨オフ、大谷獲得の最終候補に残ったと伝えられ、交渉が大詰めの段階で「大谷がトロント行きのチャーター機に乗った」という誤報も飛び交った。カナダのファンをぬか喜びさせる結果となり、元恋人にブーイングを浴びせようとカナディアンが待ち構えていた。

 それを試合開始1分47秒で黙らせた。ド軍同僚たちからはベンチで冗談のブーイングで迎えられた。

 「自分のチームが好きだからこそ、相手にブーイングする。そういう熱量は、野球好きなんだなと、逆にリスペクトを感じる」。

 ブ軍合意間近か、という誤報には自らも戸惑ったが、待っていた敵地流の出迎えには、至って冷静だった。「結果的に僕はブルージェイズにノーと言っている立場。僕がブルージェイズのファンだったら普通にブーイングすると思う」と理解を示した。

 5戦3発の固め打ちとなり、開幕28試合での7号到達は、44本で日本選手初の本塁打王に輝いた昨年より1試合速い。チームの日本生まれの選手の通算本塁打でも、沖縄生まれのデーブ・ロバーツ監督の7本に追いつき「並んだぞ、と言いました」と明かした。

 地元紙トロント・サンは大ブーイング後に浴びた一撃に「ブルージェイズにとって衝撃的で恥ずかしい夜となった」と白旗を揚げた。大型契約での移籍初年度で、高い重圧と注目度の中、かつてない滑り出し。「自分でメンタルが強いとは思わない。逆に思っている人に、あまり強い人はいない」。27日(日本時間28日午前4時7分開始)の花巻東の先輩・菊池との対戦を前に心身とも充実一途だ。(杉浦大介通信員)

 ▽昨オフの誤報騒動 大谷のFA交渉が大詰めを迎えていた昨年12月8日、MLBネットワークのジョン・モロシ記者が「24時間以内に決断する」「大谷はトロントへ向かっている」などとSNSで報じた。

 同時刻にアナハイム発トロント行きのチャーター機がフライト追跡サイトでも確認され、全米の野球ファンが「ブルージェイズ入りか?」と固唾(かたず)をのんだ。

 ところが、到着した機体から降りてきたのはカナダ人の実業家。同記者は「誤った情報を流してしまった」と謝罪し、翌9日に大谷はドジャースと合意した。

 ≪“並ばれた”ロバーツ監督ニッコリ≫ロバーツ監督はド軍での通算本塁打で大谷に並ばれたことについて「私が翔平と並べる記録はそれだけ(笑い)。もう記録の残り期間は少ないが、彼が楽しんでいることがうれしい」と笑顔だった。

 試合前には昨オフの誤報騒動についても言及した。当日はサンディエゴでゴルフのラウンド中だったそうで「電話が鳴りまくり、過去最悪のゴルフだった」と回顧。大谷の行き先で心が揺れ「翔平がトロントを熟考していたことは分かっていた。結局いい方向にいって良かったが、途中でスコアをつけるのはやめてしまったよ」と苦笑いで振り返った。