◇パ・リーグ 西武2―1楽天(2024年5月11日 ベルーナD)

 7月生まれの西武・武内は、夏に輝いてほしいという両親の思いで「夏暉(なつき)」と名付けられた。4連敗中のチームを救い、デビューから無傷の3連勝。初夏の爽やかな気候の中、笑顔も晴れ渡った。

 「連敗を止める気持ちでマウンドに上がった。粘り勝ちできた。プレッシャーがある方が、気持ちも上がる」

 勝利を手繰り寄せた一球はツーシームだった。松井監督を「変化球での腕の振りが見事」とうならせた。2―1の7回1死三塁。一打同点のピンチで、村林への2球目のツーシームは大きく落ちた。スクイズ空振り。飛び出した三塁走者が挟殺され「運が良かった」と笑ったが、直球と同じ腕の振りで切り抜けた。3回以降は毎回得点圏に走者を背負ったが、7回7安打で1失点にまとめた。

 昨秋のドラフトで3球団が1位で競合。松井監督がくじを引き当てた。円卓の奥村剛球団社長は跳び上がりガッツポーズ。席に戻る指揮官を、椅子を引いて迎えた渡辺久信GMは「ありがとう、ありがとう、と。神様のように(迎えた)」と振り返る。その左腕が、最下位に沈むチームの希望の光だ。

 新人の初登板から5試合連続クオリティースタート(6回以上、自責3以下)は99年の松坂大輔(現本紙評論家)を抜く球団新記録。大卒の武内は「松坂さん、高卒ですよね?いやいや、考えられない」と先輩に敬意を払った。新人の全て先発での無傷の3連勝は、81年の杉本正以来43年ぶりの快挙となった。

 同期入団で昇格即プロ初安打した村田とお立ち台に立ち「最初お風呂で一緒になったときに体デカすぎだなと思ったのを鮮明に覚えている」と冗談交じりに喜び合った。規定投球回に到達し、防御率1・50はリーグ5位。「ケガなく、一試合一試合勝利を目指して投げたい。次も絶対勝つ」。名前に願いが込められた夏に輝けば、秋の新人王も見えてくる。(神田 佑)

 ≪81年杉本正以来≫武内(西)が開幕から3連勝。西武新人の無傷の3連勝は18年伊藤翔以来。伊藤の白星は救援2、先発1。先発勝利での無傷3連勝は81年杉本正以来43年ぶり2人目となった。また、武内は5試合連続クオリティースタート(QS=先発で6回以上自責点3以内)と安定感抜群。新人の初登板から5試合連続QSは、99年松坂大輔の4試合連続を抜く球団新記録となった。