◇トランポリン グランドチャンピオンシップ(2024年5月12日 前橋市・ヤマト市民体育館前橋)

 男女のパリ五輪代表各1枠を争う新設大会として行われ、3人が出場した女子は東京五輪代表の森ひかる(24=TOKIOインカラミ)が予選と決勝の合計111・450点で制し、2大会連続出場を決めた。予選落ちした東京五輪後は紆余(うよ)曲折の末に金沢市に拠点を戻し、本来の自分を取り戻した。4人が出場した男子は昨年の世界選手権銅メダルの西岡隆成(20=近大)が初切符を獲得した。

 花の都への切符を得て、森にスマイルが戻った。1枠を懸けた大一番で優勝すると小さくガッツポーズ。「凄いうれしい」と喜びをかみしめた。予選からただ一人、高得点の56点台を出してリード。冒頭のトリフィスアウト(3回宙返り半ひねり)など大技をそろえ、国内第一人者として好演技を連発した。

 新調したレオタードとネイルに自身へのメッセージを込めた。白と青を基調としたデザインは、ディズニーアニメ「アナと雪の女王」の主人公エルサをイメージ。アニメ主題歌「レット・イット・ゴー」の「ありの〜ままの〜」のフレーズが、現在の道しるべ。「練習から聴いて気持ちを上げていた」と笑顔で振り返った。

 今年1月、都内から母校・金沢学院大に拠点を戻した。昨年の世界選手権では準決勝敗退の惨敗。正月、すがる思いで金沢に向かうと能登半島地震の影響で新幹線が止まる困難にも見舞われた。何とか到着した金沢の空には雪。それでも「アナと雪の女王の曲を流していたら楽しくなった。響くワードが入っていて気持ちにスイッチが入った」。失意のハートに闘志がともった。

 メダルを期待された21年東京五輪は予選落ち。一度は競技から離れ、金沢市内の寿司店でアルバイトするなど遠回りをして、今の自分がある。「いろんな経験をしてきた。東京は東京、パリはパリで別のもの。頑張りすぎず頑張りたい」。元世界女王は“ありのまま”の自分で準備を進めていく。