いよいよ2024年のプロ野球が開幕。昨季日本一の阪神は巨人相手に1勝2敗のスタートを切った、果たしてどのチームが抜け出すのか。長らく巨人の主力として活躍し、引退後は巨人の打撃コーチや内野守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任した篠塚和典氏に、セ・リーグの順位予想と展望を聞いた。


開幕3連戦の「伝統の一戦」は巨人の2勝1敗に Sankei Visual

【1位予想:阪神】

――阪神を1位と予想した理由は?

篠塚和典(以下:篠塚) オープン戦では3勝14敗1分で最下位と結果が出ませんでしたが、その原因は岡田彰布監督がしっかり分析していると思いますし、僕から見れば勝っていないことが逆に怖いです(笑)。昨季は日本一になりましたし、気持ちに余裕が出ているんじゃないかと。岡田監督が気を引き締め直せば問題ないと思いますし、昨季の戦力も維持できていますからね。

 連覇は難しいと思いますが、昨季を経て岡田監督の考える野球がチームに浸透したと思います。歯車が徐々に噛み合ってくれば、今季も優勝する力は十分にあります。不安要素は主力のケガくらいです。

【2位予想:DeNA】

――今永昇太選手(シカゴ・カブス)とトレバー・バウアー選手(メキシコシティ・レッドデビルズ)が抜けた穴は大きいと思いますが、2位はDeNAと予想されましたね。

篠塚 正直、DeNAと巨人、広島の3チームには大きな戦力の差を感じていないので、どこが2〜4位になってもおかしくないと思っています。DeNAはもともと強力な打線にドラフト1位ルーキーの度会隆輝が加入し、チームにいい雰囲気をもたらしています。度会はバッティングにセンスを感じますし、これからエース級のピッチャーと対戦していった時に何を感じ、どう対処していくかでしょうね。

 先発陣には不安がありますが、それをカバーできるだけの打線の力があります。野手陣の主力にケガ人が出なければ、リリーフ陣は充実していますし、いい戦いができるのではないでしょうか。

【3位予想:巨人】

――篠塚さんの古巣の巨人は、3位に予想されました。

篠塚 これだけ若手が多いと、経験を積ませて育てていかなければいけませんし、その点もあって3位としました。当然、巨人は常に優勝を求められるチームですが、ここ数年はレギュラーが固まっていません。3年くらいかけてチームを作り上げていくべきですし、現状の戦力で「勝て勝て」というのはちょっと苦しいですよ。

 僕らが若い頃もV9のメンバーの方々が引退していき、チームの若返りをはかる転換期だった。その時もチームに力がつくまで2、3年くらいかかりましたから。

――昨季は阪神に6勝18敗1分と大きく負け越しました。阪神との差をいかに縮めていけるかが大きなポイントでしょうか?

篠塚 確かに課題ではありますが、巨人は監督をはじめ、首脳陣、選手もかなり若返ってきています。新加入の選手も多いですし、チーム全体が変わってきていますので、あまり昨季 の結果は意識しなくていいと思います。また"ゼロからの戦い"という感じです。

 あと、阪神との開幕カード3連戦で相手にどんな印象を与えられたか、というのも大事ですね。「今年も大したことないな」と思われたら、そのままやられてしまうでしょうが、今季は2勝1敗のスタート。「これなら戦える」という手ごたえを感じられていれば、ある程度戦えると思います。

【4位予想:広島】

――広島を4位に予想されましたが、先ほど話していたように2位もあり得るでしょうか。

篠塚 そうですね。打線をけん引していた西川龍馬はFAでオリックスに移籍しましたが、昨季 見せたような"全員野球"でカバーしていくのではないかと。新井貴浩監督になってチームの雰囲気が変わりましたよね。昨季はそれに、選手たちがうまく乗っかっていったような気がします。

 先発陣は開幕直前でローテから外れた森下暢仁も含め、九里亜蓮、床田寛樹、大瀬良大地のほか、アドゥワ誠や(トーマス・)ハッチがどれぐらい勝てるか。あとは、ドラフト1位ルーキーの常廣羽也斗が1年目から先発ローテーションに割って入っていけるかですね。先発陣はわりと揃っているので、打線次第なのですが......新外国人の(ジェイク・)シャイナーや(マット・)レイノルズが早々にケガで離脱と、スタートは厳しくなりましたね。

【5位予想:ヤクルト】

――ヤクルトは昨季と同じ5位に予想されました。

篠塚 昨季、戦列を離れることが多かった塩見泰隆が、シーズンを通じて出られるのか。彼は打線に勢いをもたらす意味で重要な存在です。あとは、4番の村上宗隆が昨季 以上の成績を残せるかも大事ですが、復調が期待された山田哲人が離脱したのは痛いですね。

 ただ、(ホセ・)オスナや(ドミンゴ・)サンタナも健在ですし、西川遥輝も加入しました。課題は先発ですが、リーグ優勝した2021年、22年もふた桁勝利を挙げたピッチャーはいなかったんですよね。だから以前のように打線が打てるかが、ヤクルトが浮上するためのカギになると思います。

 とはいえ、やはり安定してふた桁勝てる先発ピッチャーは必要です。石川雅規という模範になる大ベテランがいながら、エース候補として期待されている奥川恭伸らが戦力になれていません。奥川をはじめとした若手が先発ローテーションに入ってこないと、今後も厳しいでしょうね。

【6位予想:中日】

――6位は、3季連続で中日になるとの予想ですね。

篠塚 課題が打線であることは明白で、中田翔や中島宏之らの加入は確かにプラスですが、打線がそう大きく変わることはないと思うんです。巨人にも言えることなのですが、野手に安定感がありません。安定感というのは、2、3年と継続して成績を残せる「レギュラー」と言える選手がいて出てくるものですが、なかなかそういう選手が育ってきません。

 数年前まではよかった高橋周平は、本来であれば主力でいなければいけないし、若手だと岡林勇希あたりが打線を引っ張っていかないといけません。細川成也、石川昂弥、石垣雅海、鵜飼航丞、ブライト健太らも、中田の加入がいい刺激になればいいですね。

 ピッチャー陣は先発もリリーフも充実していると思いますが、やっぱり打てないと勝てません。得点圏で、中田を中心とした中軸がいかに打てるかでしょうね。

【プロフィール】

◆篠塚和典(しのづか・かずのり)

1957年7月16日、東京都豊島区生まれ、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年に現役を引退して以降は、巨人で1995年〜2003年、2006年〜2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。

著者:浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo