木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第37回

 ゴルフをやっていて案外難しいのが、「オーケー」を出すタイミングです。

 そんなの簡単だろ、グリーン上でボールがピン(カップ)に寄ったら「オーケー」と言えばいいだけでしょ......って、確かにそうなんですが、実際は相手の力量や性格、カップまでの距離や傾斜、時と場所などによって微妙に違ってきます。

 そこで、今回は意外と奥が深い「オーケー」の話をしていきたいと思います。

(1)プロとのラウンドでのオーケー
 今まで、たくさんのプロとラウンドさせてもらってきました。最初にプロとラウンドした際には「オーケー」と言っていいものか、かなり悩みました。

 だって、プロのトーナメントでオーケーはないですから。プロなら、完全ホールアウトするんだろうなと思いますよね。

 けど実際は、プロも我々と回るような時は練習で来ているので、アマチュアと同じくオーケーありでプレーします。

 ただ一応、その日のラウンド目的を事前に聞いておくようにしています。試合が近いので真剣モードでプレーし、完全ホールアウトでやりたいというプロもいれば、反対に遊び半分で来ているから、適当にオーケーを出してくれればいい、という方もいますから。

 かつて、某Cプロのパットが微妙な距離に残って、「オーケー」を言うか言うまいか悩んでいたら、「オーケーくれないの? ボクはプロだよ、この距離が入らないと思ってるの?」と茶目っ気たっぷりに言われたことがありました。

 これは失礼と思い、その後は微妙な距離が残った時には、すべてオーケーを出しましたけどね。

(2)誰がオーケーを決めるか
 ゴルフは1組最大4人で回りますが、オーケーの判断を最初に下すのは、そのパーティの主催者が多いです。それは、コースのメンバーだったり、年長者だったり、あるいは、そのなかで一番上手い人だったりがオーケーの判断基準を示します。

 だから、誰かに呼ばれたゴルフでは、自らしゃしゃり出て「オーケー」と言わないことです。まずは、どんな感じでオーケーを出すのか、様子を見るのがいいでしょうね。

 従来、オーケーの距離は60cm〜70cmくらいと言われていますが、その10cmの差が微妙です。今日はオーケーが「甘いな」とか「厳しいな」とか、そのパーティの状況を判断し、それに合わせて「オーケー」と言えばいいのです。

 もちろん、1mぐらいの距離でもオーケーを出しているパーティもあります。そこは、郷に入れば郷に従え。協調性を重んじて、その日は"1mオーケー"でラウンドするしかないです。

 4人のなかでリーダーが決まっている場合は、オーケーの基準もすんなりと決まって事が運びますが、問題は異なる文化圏の人の集まりで、序列が決まっていない場合です。

(3)価値観が異なる人々によるオーケーの基準
 以前、倶楽部のメンバー同士でラウンドする機会があって、こちらは親切心から甘いオーケーを出したのですが、その同伴プレーヤーは「これ、オーケー? ダメでしょ。ちゃんと打ちますよ」と言うのです。

 その方は競技にも参加していて、自分にも厳しい方です。要は、「オレを舐めちゃいけないよ。そんなぬるいゴルフをやってないよ」と言いたかったのです。

 そんなこともありますから、ラウンド最初の1ホール目のオーケーは、それが基準になるので慎重にしたいです。


「オーケー」を出すかどうかの判断って、ほんと難しいんですよね...。illustration by Hattori Motonobu

 まあでも、出合い頭のオーケーは言ってみなければわかりません。そこは忖度せず、ふだん自分のやっているオーケーの距離で言ってみて、もし意見がぶつかったら、相手に合わせればいいかと思います。

(4)時と場合によるオーケー
 オーケーの合図は時と場所によっても、微妙に変化してきます。たとえば、後半のラウンド。すでにハーフを回って、みなさんの腕前や性格がおおよそわかってきたとします。そうしたら、それまでとはオーケーの基準が変わってもいいと思います。

 前半のラウンドを見て、この人はパットの返しがヘタで、3パットを時々してしまう。加えて、今日は結構叩いている......という人が、また返しのパットを1m残した。しかも、オーケーを欲しそうな顔をしているじゃないか。そうなった場合は、オーケーでいいです。

 あと、ポジション的に言うと、上りの真っ直ぐのラインですね。それは入りやすいですから、甘めのオーケーでいい、という暗黙のルールがあります。

(5)秘技"オーケー返し"
 今日はオーケーが厳しいという日。そのオーケーを厳しくしている張本人が、微妙な距離を残してしまったとしましょう。その際は意地悪せず、にこやかに「オーケー」と言ってあげましょう。

 他人に対して厳しい人は、予想外の施しを受けた時、素直に喜んで「ありがとう」と言って、オーケーを受け取るものです。そうなると、相手も人の子。こっちが微妙な距離を残すや、「あ〜それ、オーケーでいいよ」と優しく言ってくれます。

 これぞ、秘技"オーケー返し"。やっぱり『人にやさしく』ですね!......って、ブルーハーツかぁ〜。

(6)ラウンドの流れによって...
 ゴルフのラウンドは、リズムや流れが大事です。バーディーゲットで勢いづいて、そこからパーを積み重ねていく――そういう流れをうまくつかんだ人が好スコアを出せます。

 逆に言うと、この微妙な距離のダボパットにオーケーをくれないかな。入れないとトリプルになってしまう......という時に限って、誰もその窮状に気づかず、いつもどおりのシビアな判断でオーケーを出してくれない。

 結果、その微妙なパットを外してトリプル。そこから、一気に調子を崩していってしまうってこともよくあります。

 そこはもう、察してほしいし、察してあげたいです。微妙な距離を残した同伴競技者がオーケーを欲しそうな眼差しをしていたら、「オーケー」と言ってあげましょう。

(7)オーケーの条件
 というわけで、基本的に叩いている人にはオーケーを甘くしてあげるべきです。スコアで言うと、バーディーパット、パーパットは厳しく、ボギーパットで60cm〜70cmの通常ルール。ダボパットは甘く、トリプルパット以上は、おおよそオーケーにしてあげたいですね。

 こういう甘い表現の記事を見ると、「そんなのゴルフじゃない」という方もいることでしょう。でも、そもそもオーケーパットは、ルールブックに記載されていないローカルルールみたいなものです。

 だから、ルールに則ったゴルフをやりたい方は、完全ホールアウトしてください。けど、全ホールカップインをすると、えらい時間がかかってスロープレーになり、周りに迷惑をかけることになります。じゃあ、ひとりだけオーケーなし、というのも奇妙なものです。

 自分はもう、当分競技ゴルフに出る予定がないので、残り人生はオーケーゴルフのみ、かな。そんなわけで、みなさん、優しく「オーケー」を出してくださいね。

著者:木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa