今週から東京競馬場を舞台にしての5週連続GI開催。そのトップを飾るのは、3歳馬によるマイルの頂上決戦となるGINHKマイルC(5月5日/東京・芝1600m)だ。

 王道の3歳クラシックと比較して、これまではどちらかと言えば"格下"感が否めなかったGIだったが、今年は2歳女王と2歳王者が参戦。他にも好メンバーが名を連ね、大いに注目される一戦となりそうだ。それゆえ、日刊スポーツの松田直樹記者もこう語る。

「3歳マイラーの最強馬を決める一戦に、かつてないほどの盛り上がりを高める面々が出走してきました。GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)の覇者アスコリピチェーノ(牝3歳)と、GI朝日杯フューチュリティS(12月17日/阪神・芝1600m)の勝ち馬ジャンタルマンタル(牡3歳)。前年の牡牝の最優秀2歳馬がそろって参戦してくるのは、初めてのケースです。

 前者は、牝馬クラシック初戦のGI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)で2着と惜敗。勝ち馬とは、4角でのコーナーワークの差が明暗を分けました。後者は、GI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)で3着。前受けの競馬で、距離の壁を感じさせました。

 とはいえ、ともに明け3歳になってからも大舞台で実力の高さを証明。当然のことながら、2頭はここでも注目の的であり、主力となることは間違いありません」

 ただし、松田記者はそう言ったあと、こう続けた。

「となれば、この"2強"対決への注目度は一段と増すでしょう。逆に言えば、この2頭の存在によって、他の実力馬は"オイシイ"オッズが見込めそうです」

 もともと"荒れる"レースとして知られるNHKマイルC。実際、過去10年の結果を振り返っても、3連単では10万円超えの高配当が7度もあって、一昨年には150万円超えの超高額配当が飛び出している。

 まさに穴党が腕ぶす"お宝レース"と言えるが、今年は牡牝それぞれの世代トップクラスの馬が出走。穴党の出番はなくなってしまうと思われたが、松田記者によれば、"2強"出走によって、かえって"オイシイ"配当が狙えるというのだ。

「過去10年の結果を見ても、1番人気の勝利は2回だけ。馬連でも万馬券が4回もあり、ひと筋縄ではいかないレースです。今年は"2強"以外にも、素質ある実力馬が集結。人気の盲点となる伏兵を見極めることが重要になってきます」

 そうして、松田記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。1頭目は、シュトラウス(牡3歳)。2歳時に重賞勝ちがある同馬の巻き返しに期待する。

「前走のGIIIファルコンS(3月16日/中京・芝1400m)は9着に敗れましたが、新馬戦(6月3日/東京・芝1600m)では後続に9馬身もの差をつけて逃げきり勝ち。3戦目には出世レースのGII東京スポーツ杯2歳S(11月18日/東京・芝1800m)で、評判馬相手に快勝した実力馬です。


NHKマイルCでの巻き返しが期待されるシュトラウス。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 もともと調教で抜群に動く馬で、潜在能力の高さは間違いありません。ただ一方で、暴走気味に早めに先頭に立ってしまった朝日杯FSで10着と大敗を喫するなど、折り合いに不安を抱えています。

 それでも、この中間は4月18日に帰厩後、すぐに初時計を計時。その時点で、同馬を管理する武井亮調教師は『メンタル面は崩れていない。多少は重いけど、気になるほどではない。能力は(同じく管理馬の)アーバンシック(皐月賞4着馬)よりあると思っている。メンタル面は前回からだいぶよくなっている感じ』と、ここに向けて手応えを得ているようでした。

 メンタル面――同馬について回る課題ですが、武井調教師の言葉から、少しずつながら改善傾向にあると見ていいと思います。馬の後ろで我慢をさせる調整を課すなど、調教での工夫の成果が出てきました。

 前走の9着という結果も、折り合い重視の競馬に徹してのもの。道中、最後方に位置して、(前を)無理に追いかけることなく、人馬は呼吸を合わせることができていました。

 直線ではスペースを確保ができず、まともに追うことができませんでしたが、収穫のある内容。前向きすぎるために先行策を取っていた馬が、脚をタメる走りができたことは今回につながるはずです」

 松田記者が推奨するもう1頭も重賞勝ち馬だ。

「イフェイオン(牝3歳)です。同馬も終(しま)いの脚に魅力があります。

 前走の桜花賞は着順こそ11着でしたが、走破時計は1分32秒9。勝ち馬のステレンボッシュとはコンマ7秒差と、そこまで大きく負けていません。

 道中は内枠で他馬に囲まれて、3角では中団まで位置を下げる形になり、スムーズさを欠いていました。先行できればしぶといのは、外枠発走を克服した前々走のGIIIフェアリーS(1月7日/中山・芝1600m)での勝利で実証済みです。

 こちらも、若干折り合いに不安はありますが、デビューから手綱を取り続けている西村淳也騎手とのコンビでスムーズな競馬ができれば、一発あってもおかしくありません」

"荒れる"3歳マイル王決定戦。今年、波乱の使者となるのはどの馬か。ここに名前が挙がった2頭も、その候補であることは間違いない。

著者:土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu