宅配冷凍弁当を手掛けるナッシュ。2018年に事業を開始し、2024年2月には累計販売食数は8000万食に達した。自社工場による製造を進めているほか、大阪の一部地域では自社で配送を行うなど、内製化の動きを強めている。一見地味に見える取り組みだが、それこそが競争の激化する冷凍宅配弁当市場での差別化になるという。

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冷凍弁当は、コロナ禍においては外出自粛などで注目を集めた。最近では出社率の増加による時短ニーズに応えた商品として支持されている。元々は高齢世帯向けの商品が市場には多く出回っていたが、近年では若年層を意識した商品群や、たんぱく質をふんだんに摂れるなど、よりコアなニーズに応えた商品なども登場している。

ナッシュは2016年に創業した。生活習慣病の予防に着目し、18年から冷凍宅配弁当の事業を行っている。現在、商品は自社工場で製造しており、22年7月には兵庫県尼崎市に新たな工場を設置した。2024年2月時点の累計食数は8000万食に達している。

事業開始時の主な利用層は、健康への意識が強い高年齢層を想定していたが、スタートしてみると想定とは異なる動きを見せた。

販売本部広告部広報の檜本修太さんは「良く利用していただけているのは20〜30代の、単身世帯と2人世帯。そこを狙っていたわけではなかったので、最初は驚いた」と振り返る。手軽に栄養バランスのとれた食事を摂れることなどが支持されたようだ。リピートするほど価格が安くなる点も好評で、今後はより上の世代へのアプローチも強めていくという。

檜本さん

商品は60種類以上のメニューを提供している。毎週3品ずつ新メニューを追加し、商品の入れ替えを行うなどして飽きが来ないようにしている。

メニューは、塩分量の制限を定め、糖質は30g以下、塩分2.5g以下にして、栄養価と味のバランスの取れた商品のみを提供している。食品添加物も厳格な基準を設け、使用しない添加物の情報はホームページで公開している。

今後の取り組みとして、メニュー数を現在の約60種類から100種類まで広げ、より好きなメニューを選べるようにして満足度をより高めることを目指す。また、2024年6月までに製品の重量をすべて215g以上にする。それを満たしていない既存のメニューは、今後重量を増やすようリニューアルを進める。

他にも、SNSやWEB広告、人気YouTuberとのコラボなどを通じて利用者の拡大にも力を注いでおり、コロナ禍が明け、新規利用者の拡大ペースはコロナ禍当時よりは緩やかになったものの、着実に増え続けているという。リピーターも増加しているようだ。

〈物流の内製化にも着手、ベンチャーとしての挑戦〉

ナッシュの取り組みを檜本さんは「垂直統合型のビジネス」と話す。製造から配送(一部エリア)までを一貫して行っており、冷凍弁当を手掛ける企業でここまで行えている会社はそう多くないという。

メニュー開発も自社工場を持つことで柔軟な対応がしやすいようだ。そのため「競合が多く、新規参入も増えているこの市場で、泥臭く内製化を進めていることは差別化になる」と語る。

最近では、大阪の4区(西区、中央区、浪速区、天王寺区)で、商品の宅配を自社配送に切り替えた。「物流費の高騰は今後避けられない。ベンチャーとしてやれることはやってみようとスタートした」(檜本さん)。取り組みが安定した場合、大阪府内での配送料を大きく落とせる見込みだ。まずは大阪で自社配送モデルを構築し、将来的には東京での物流の内製化も目指す。

物流の内製化の効果はコストダウン以外にもあった。檜本さんは「積み替えが複数回あると、商品が外気にさらされて温度が上昇してしまい劣化してしまうというケースもある。内製化によってこうしたことが減り、品質を担保できるようになったことは強みだと思う」と話す。

檜本さんは「今でこそナッシュの認知は上がっているが、まだ利用されたことのない人がほとんど。もっとお客様に向き合って取り組んでく」と力を込めた。

〈冷食日報2024年4月3日付〉