次男サウルス(左)が私の頭をパクリ


 

歩いたのは3歳を過ぎてから

 ダウン症のある子は、定型発達の子どもたちよりゆっくりと育つ。定型発達の子どもたちが1歳前後で立って歩き出すのに比べ、ダウン症のある子たちは2歳くらいになると言われています。わが子に至っては、やっと立って歩き出したのは3歳を過ぎてのことでした。次男の成長過程があまりにもマイペースすぎるため、私の心境は焦る、を飛び越え一周回って穏やかでした。焦ったところで、本人が歩きたいと思うまで歩かないだろうし。「まぁ、いつか歩くさ!」とお気楽でした。

 トレーニング療育にも取り組んではいましたが、基本的にはすべての意思は本人任せ。私は私で「歩かない赤ちゃん」をいいことに、彼を小脇に抱え行きたい場所へ好き放題に出かけました! ボクササイズやヨガ、お友達とのランチ。ヒョイ、と持ち上げチョン、と置く。私の傍らで次男はいつもニコニコ。よくない言い方かもしれませんが、めちゃめちゃ便利でした(笑)。

 「いい子だね」「かわいいね」と、瞬く間にみんなの輪の中へ。歩かないから私の好き勝手にアチコチへ動けた結果、意図せず私は、ダウン症のある次男をみなさまに知っていただくお披露目キャンペーンをしていたようでした。いろんな場所へ行きいろんな人に触れた次男は、場所見知りも人見知りもしない子へと育ってもくれました。

「ヤダよ」…からのノリノリ 

 先日は、深く説明もしないまま唐突に「今から恐竜になりに行こう」と声かけ。無論、私が行きたいイベントだったから。恐竜に興味があるわけでもない次男は初めの方こそ「恐竜なんてヤダよ」と言っていましたが、着ぐるみを着せたらノリノリになってくれて最後は参加者全員に自らハイタッチをして回っていました。

 また別のある日は「オープニングパーティーに行くよ」とだけ告げるとけげん顔でしたが、会場に着いたらハグをしたり肩車をしてもらったり、最後はスプーンをマイクに見立てて勝手にスピーチ。主催者側の立ち位置になっていない?

 「そうだよ、なんでも『やらず嫌い』ではなく、一度でいいからやってみよう。やってみて、それがニガテだったりイヤだったりしたらやめたらいいんだから。トライ&エラーだ!」なんてカッコいいことを言いながら、実は私が楽しみたいだけ。

 次男のお調子者が元来のものなのか、私によって鍛えられたものなのか。私の「行きたい」「やりたい」の好奇心で、次男の世界が広がってくれているといいなと思っています。今年もこんな母に付き合ってくれて本当にありがとう!

奥山佳恵(おくやま・よしえ)

 俳優・タレント。2011年に生まれたダウン症の次男を育てる。長男はすでに成人。