京急電鉄(横浜市西区)が、約60年間放置していた社有の山林を保全・活用するプロジェクトに乗り出している。もともと開発用地として取得したが、市街化調整区域のため、長い間、そのままの状態だった。持続可能な開発目標(SDGs)への注目が高まっていることも踏まえ、企業として「自然との共生」を図る姿勢をアピールしたい考えだ。

京急が所有する山林で遊ぶ参加者ら=神奈川県横須賀市で


手付かずの自然は宝物 「原っぱ大学」主宰者

 3月中旬の休日、神奈川県横須賀市内にある京急所有の山林に、外遊びを通じて学びを深める「原っぱ大学」(逗子市)の講座が開かれた。集まったメンバーら20人は小屋造りや探検など、都会ではなかなかできない体験を満喫した。

 主宰する塚越暁さんは、手付かずの自然が残るこの場所を「『宝もの』だ」と話す。都心からのアクセスがよく、ヤマザクラやマテバシイ、ケヤキなど植生が豊かで、水場もある。「原っぱ大学」の活動場所の一つに選んだのは「遊び場として優れている」からだ。

 京急は三浦半島に2カ所の山林を所有し、広さは計100ヘクタール。売却できずに長年放置され、企業経営の面ではコスト要因とみなしていたが、昨年2月から「みうらの森林(もり)プロジェクト」を始め、活用していく方向に転換した。

間伐材も活用 環境保全と収益性の両立目指す

 山遊びに加えて、間伐材の活用も進めており、バイオマス発電の燃料、ベンチやタンブラーなどグッズの材料として生かしている。まだプロジェクト単体では黒字化していないが、利用者やグッズを増やしたり、自治体の森林環境譲与税の支出先としてPRしたりして、環境保全と収益性の両立を目指すという。

 今後は企業研修の会場として使うなど、他企業とも連携して価値を高めたいという。京急の上田航暉さんは「山林活用の事業モデルを確立したい」と話している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年3月23日