おもちゃは片付けない、すぐにケンカする…。元気あふれる男子2人を育ててきた絵本作家・堀川真さんが、ドタバタな毎日を描いたエッセー漫画「たぶん、なんとかなるでしょう。続」が3月、前作から7年ぶりに刊行されました。子どもたちのたしなめたくなるような行動も、止めずに「貴重なことが起こっている」と見届ける堀川さんに、子育てへの向き合い方を聞きました。

堀川さん著「たぶん、なんとかなるでしょう。続」から一部抜粋=福音館書店提供


 漫画は、2012年から10年間、福音館書店の月刊育児誌「母の友」に連載。3歳差の兄ブンちゃんが4〜7歳、弟ダイちゃんが1〜4歳のころをモデルに描いた作品は「たぶん、なんとかなるでしょう。」(2017年出版)に収録。続編の本作は、兄が小学生、弟が保育園年長から小学校低学年くらいまでを描く。風呂上がりに裸でふざけるダイちゃんを「注意したらおさまっちゃうのかと思うとモッタイナイ」などと、コミカルにつづる。4月の刊行記念イベントでは、東京すくすくで「お父ちゃんやってます!」を連載する写真家・加瀬健太郎さんと対談した。

「期待に寄りすぎず、子育てを楽しんでもらいたい」と話す堀川さん


思うようにならないのは、悪くない

−日々、あきれたり、時にイライラしたりすることもある子どもの言動も、作品を通して客観的に見ると、実は楽しい日々を過ごさせてもらっているんだなと気づかされました。

 思うようにならないことって、悪くないと思うんですよね。付き合ってる自分が、面白くなってきちゃう。結構すぐ忘れちゃうところもあります。そもそも、そんなに自分が立派な人でもなくて、子どもに期待とか何にも言えない人生を歩んできているよね、という思いが僕たち夫婦にはあって、タイトルの「たぶん、なんとかなるでしょう」につながっているのだと思います。

 自分を振り返って、どういうふうに子育てされて自分になったかと考えると、今の自分を親が形作ろうと努力したとはとても思えないんですよ。

−子どもに期待しすぎず、のんびり構える子育ては、なかなか難しいです。

 うちの奥さんには、気づかされることがよくあるんだけど、「成功しなくてもいいから幸せになってほしい」って言うんですよね。

 例えば、勉強ができるのか気になるところですが、じゃあ椅子に縛り付けてって話にはならないし、勉強は向き不向きかなと話しています。うちの子はそんなに成績はよくないんだけど、弟から「兄ちゃん、このポケモンって進化したら何になるの」って聞かれて「それはなんとかかんとかで…」って話が止まらない様子を見て「頭が悪いわけじゃないんだな」って思うと、それはそれで泳がせておいていいかって思う。

「子どもに付き合っているうちに面白くなる」と話す堀川さん(左)と加瀬健太郎さん


 うちの奥さんは「心配はあんまりしてない」って言うんですよね。心配っていうのは、将来こうなってほしいっていう話だから、それはもうしょうがない。「だけど腹が立つ」って言うんです。プリントあるのって聞いたら「ない」「あるでしょ!」とか、お弁当の空箱を出さないとかね。

 心配することと腹が立つこと、どっちが大事って言ったら、目先の「腹立つ」に対処するぐらいでいいのかもしれないです。先々の心配はしてもきりがないところでもあるし、親から見たときの成功のイメージっていうのは、子どもの幸福とはつながらないだろうって話をしました。

「注意しなきゃ」ではなく「面白い」

−刊行記念イベントでは、読者の方が「うちはおもしろい家族だと思っていたけれど、堀川さんほどじゃなかった」と話していました。どうして、おかしなことがたくさん起こるのでしょうか。

 たぶんどの家でも、同じことが起こってるんじゃないかと思うんですよね。でもそれを面白いって思うのか、注意しなきゃなんないって思うことなのか。僕がいいかげんなんだと思います。

 なんで黙って見てるのってことを、ニヤニヤしながら見てるお父さんがいる。悪趣味なお父さんがいるということかもしれないですね。決してうちが特別なんじゃなくて、ほっといたらそっちの方にいっちゃったんだろうなということはいっぱいあります。

−地元の北海道では、0〜6歳向けの工作教室や、「母の友」でも、身近な素材で工作する「つくろう あそぼう アソベル堂」の連載をされています。

 物を作って遊ぶという経験を、なるべく長い期間楽しんでもらいたいなと考えています。絵を描いたり物を作ったりすることが、自分は苦手だとか、思うようにできないっていうのが、早めに来ちゃうと、もうそういうことが嫌いになっちゃう。なるべく苦手だとか、下手だってことに気づかないで大人になってしまったらいいんじゃないかなって思います。

 絵を描くことひとつにしても、幼い頃だったら屈託なく描けていたのが、大体小学校の3年、4年ぐらいになってくると、自分は下手だって思って急に描かなくなる。なるべくそうやって気づかないように、楽しく遊んでもらいたいですね。

堀川真(ほりかわ・まこと)

 絵本作家。1964年、北海道生まれ。農学、美術、木工を学び、その後、創作活動に入る。絵本や読み物の絵を描くほか、子ども向けのワークショップにも携わる。名寄市立大学社会保育学科教授。著書に「あかいじどうしゃ よんまるさん」「たぶん、なんとかなるでしょう。」(共に福音館書店)、「私の名前は宗谷本線」(荒尾美知子文、あすなろ書房)など。月刊誌「母の友」にて「つくろう あそぼう アソベル堂」を連載中。現在、ブンちゃんダイちゃんと称して漫画のモデルとなった兄弟は17歳と13歳。