ほとんど男性が占める総合職には適用される社宅制度が、大半が女性の一般職に適用されないのは「男女雇用機会均等法に違反する男女差別だ」などとして、一般職の女性が勤務先を訴えた裁判で、東京地裁は訴えの一部を認め、会社に370万円あまりの支払いを命じました。

この裁判は、農業用フィルムなどを扱う東京の会社「AGCグリーンテック」に勤務する一般職の女性(44)が2020年に東京地裁に起こしたものです。

当時、この会社の総合職は20人全員が男性で、一般職は6人中5人が女性でした。

会社は社宅制度として、通勤圏に自宅がない総合職に賃貸住宅の家賃の最大8割を負担していましたが、一般職にはこの制度の適用を認めていませんでした。

女性はこうした運用が男女雇用機会均等法が禁じる男女差別に当たるなどと訴えていました。

これに対し、会社側は裁判で「総合職のみに社宅制度を認めているのは転勤の可能性があるため」などと主張し、男女差別ではないとして争っていました。

きょうの判決で東京地裁は「男女比の偏りは、総合職の大半を占める営業職に女性の応募が少ないことが原因」と指摘。性別を理由に取り扱いに差をつける「直接差別」はなかったと判断しました。

しかし、この会社には転勤を経験したことがない総合職が一定数いることなどから、「社宅制度は総合職でありさえすれば、転勤の有無や可能性を問わず希望すれば適用された」と指摘。

結果的に社宅制度の恩恵を受けたのは、過去に在籍した女性総合職1人を除き全員男性であったことなどから、男女雇用機会均等法で禁止された「間接差別」に当たるとしました。

そして、この会社の社宅制度が変更された2011年以降に会社が負担すべきだった女性の家賃の一部など、あわせて370万円あまりを支払うよう会社に命じました。

原告の一般職女性
「本当に悔しかったです。自分がこれは男女差別だと思っていたことが、社内では通用しなくて。総合職、一般職というのをなくして、一本化してほしい」