仙台での開幕カードを勝ち越し、2日に本拠地開幕戦を迎えた西武は、昨年の覇者・オリックスを相手に2ー1の接戦をものにした。その勝因には、選手同士による”意識の共有”があった。

 勝負の分岐点はいくつもあったが、まず注目したのは西武2点リードで迎えた6回表。二死一、二塁となったところで、西武ベンチは球数が120球に達していた先発・平良海馬から水上由伸にスイッチした場面だ。代打・杉本裕太郎、3年前の本塁打王に一発が出れば一気に逆転される場面だ。

【PHOTO】球場を盛り上げたオリックス・バファローズ球団公式ダンス&ヴォーカルユニット 「BsGravity」を特集! ここで西武にビッグプレーが飛び出す。1ストライクから2球目を投じる前、捕手・古賀悠斗がミットを閉じると同時に、二塁手の外崎修汰が素早くベースへ入ると、水上が素早く正確な牽制を送球。二塁ランナーのセデーニョは慌てて戻ったが間に合わず、タッチアウトでピンチを脱した。捕手の古賀は、その時の心境を振り返る。

「きつい場面でピッチャーも代わったところだったので、『隙あらば』というところでした。自分もそうでしたが、二遊間の源さん、トノさんがよく見えていたので、そこからでしたね。捕手としては本当に助かりました」

 いわゆる「ピックオフプレー」。年に数回しかないようなプレーだが、代わったばかりの水上がここでしっかり決められたのは、キャンプからの練習の賜物だろう。そうした身体の動きだけではなく、野手間で事前に意思疎通ができていたことも大きかったと二塁手の外崎は話す。

「水上に代わったときに(マウンドに集まって)『(ピックオフが)あるかもな』っていう話が出ていたので、自分も含めてみんなで準備しておこうという感じでした。その上でのあのプレーだったので、前もっての準備、それが良かったのかなって思います」

 言葉にしてしっかり意識を共有する。身体の準備だけではない、意識の準備とその共有が大事な場面でのビッグプレーにつながっていった。

 勝負を左右した意識の共有はこの試合、もうひとつあった。7回表から登板した本田が3連打を浴びて1点差まで詰め寄られ、なおも無死一、二塁でクリーンアップを迎える。その中で捕手の古賀はこう考えた。

「(1点取られたことは)仕方ないとして、まだリードしている状態だったので、あそこで同点にされると試合の流れはもうオリックスに行ってしまうだろうと思っていました」
  絶対絶命。このピンチで古賀は腹を括った。3番・頓宮裕真、4番・森友哉に対して、ファーストストライクにいずれも甘いコースのチェンジアップを選択。結果、2人の巧打者のタイミングをずらし、いずれも平凡なフライで討ち取った。
 「怖さもありました。けど(チェンジアップは)本田さんの勝負球でもありますし、簡単にまっすぐを行くよりは、チェンジアップで打ち損じを狙うという形で行きました。自分も勇気がいりましたが、ポンさん(本田)と(サインを出して)頷き合いながら、2人で意思疎通をして決めたので、悔いは残らないかなと」

 2アウトになってから、5番・セデーニョには一転してストレート2球で追い込むと、緩急とコースを散らして最後は外角低めのチェンジアップで空振り三振。中途半端な気持ちではなく、バッテリーの意思が明確につながったことが、非科学的だがボールにもしっかり伝わり、好結果へとつながっていったのだ。

 開幕カードに続いて、幸先良いスタートと切った西武。その勝利を生んだチーム内での意思疎通が続く限り、他球団にとって、今年は侮れない存在となっていくはずだ。

取材・文●岩国誠

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