ロサンゼルス・エンジェルスにひとつの伝統がある。試合前、大型ビジョンで球団の歴史や歴代の名選手、タイトル受賞者、2002年のワールドシリーズ優勝といった名シーンなど、63年の歴史を6分35秒の映像で振り返る“コーリング・オール・エンジェルス”だ。

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 現地4月5日に迎えたエンジェルスの本拠地開幕戦でも、24年版の“コーリング・オール・エンジェルス”が流された。23年の本塁打王で、ア・リーグMVPを受賞した大谷の姿が映ると、エンジェルスのファンから激しいブーイングが飛んだ。このシーンは日米で大きな話題になった。

 米メディア『The Athletic』は、「マイク・トラウトの映像が映るたびに、球場は華やかな歓声に包まれた。そしてMVP受賞者の大谷に対しては激しいブーイング。ロサンゼルス・ドジャースと7億ドル(当時約1015億円)で契約したことを考慮しても、驚くほどの反応だった」と、球場の雰囲気を伝えている。

 ただ、大谷はドジャースと契約する前に、エンジェルスの意向を確認している。そこで大谷との契約を見送る決断を下したのが、球団オーナーのアート・モレノだった。そうした事情はファンも重々承知している。必然的にファンのブーイングはモレノに向けられた。

「大谷がエンジェルスを退団した責任は、モレノにある。“コーリング・オール・エンジェルス”でモレノの映像が流れると、多くのファンは明らかな怒りの声をぶつけた。モレノ本人は、そのシーンを2階のスイートで目の当たりにした」
  翌日の“コーリング・オール・エンジェルス”から、モレノの姿は消えた。翌々日も同様だった。同メディアはエンジェルスに対して、「誰の指示でモレノの映像をカットしたのか?」と質問したが、球団は返答を拒否したという。

 24年2月に同メディアは、エンジェルのファン1956人にアンケートを実施。「モレノの仕事ぶりをどう評価するか?」という質問に対して、「良い」と答えたのはわずか3人だけで、「平均以下」、「悪い」と答えたファンが全体の91.1パーセントを占めた。

「このオフにモレノは4100万ドル(約62億円)の給与削減を計画していた。そのプランには大谷の退団も含まれていたという。オーナーは組織に必要な分野への財政投資を拒否し、公的な説明責任も回避し続けている」

 大谷が退団したオフシーズンに、エンジェルスはFAだったコディ・ベリンジャーやブレイク・スネル、テオスカー・ヘルナンデス、JD・マルティネスら、数々の選手の契約先候補に挙がりながら、最後まで一線級の選手と契約することはなかった。モレノが買ったのは、ファンの怒りだけだった。

構成●THE DIGEST編集部

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