現地4月29日時点で、リーグワーストの勝率.214(6勝22敗)と苦しんでいるホワイトソックス。昨季途中から再建に舵を切り、開幕直前にはエースのディラン・シースをパドレスへ放出するなど、主力選手を次々と切り売り。さらに昨季38本塁打のルイス・ロバートJr.が股関節の故障で開幕直後の4月6日に離脱するなど、チームに残る数少ない主力選手にも怪我人が続出し、戦力はガタガタだ。

 そんな悲惨なチームにあって救世主と呼べる活躍を見せているのが、今季から加入した右腕エリック・フェッディだ。他のローテーション投手に防御率5点台や6点台もゴロゴロいる中、チーム最多の34.2イニング(6先発)に投げて防御率2.60と堂々たる成績。右打者にはシンカーヤスイーパー、左打者にはカッターやスプリッターと球種を投げ分けて巧みに抑え、どれだけ勝利に貢献したかを示す総合指標WAR1.5(Baseball Reference版)はダントツのチーム1位だ。

 まさにエース級の活躍を見せているフェッディだが、ここに至る道筋は平坦なものではなかった。ネバダ大ラスベガス校から2014年ドラフト全体18位でナショナルズに入団するも、プロ入り直後にトミー・ジョン手術。故障を乗り越えて17年にメジャーデビューするもなかなか殻を破れず、6勝13敗に終わった22年オフに契約を解除されてしまった。
  メジャーでは獲得する球団がなく、23年は韓国のNCダイノスと契約。結果としてこれが転機となった。自分の球種をそれぞれどう改善すれば打者を抑えられるのかを見直したことで、「自分には打者をアウトにできるツールがあると感じて、大きな自信を得た」フェッディは、20勝6敗、防御率2.00、209三振で投手三冠を獲得。MVPにも選出され、日米球界の争奪戦の末にホワイトソックスと2年1500万ドルで契約し、メジャーへ復帰した。

 4月17日のロイヤルズ戦で今季初勝利を挙げると、その次のツインズ戦では6回11奪三振と圧巻の投球。さらに28日のレイズ戦では自己最長8.1イニングを投げて2勝目を記録するなど、登板を重ねるごとに調子を上げているフェッディ。このまま行けば、夏のトレード市場で目玉の一人になり得る。ホワイトソックスの救世主が、シーズン終盤にはコンテンダーの新たなヒーローになっているかもしれない。

構成●SLUGGER編集部

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