開催中の男子テニスツアー「ムチュア・マドリード・オープン」(4月24日〜5月5日/スペイン・マドリード/ATP1000)で、元世界ランク1位のラファエル・ナダル(スペイン/現512位)が対戦相手のペドロ・カチーン(アルゼンチン/同91位)に着用したシャツをねだられた一件が話題になっている。

 注目のやり取りは、4月29日のシングルス3回戦で起こった。今季限りでの現役引退を示唆しているクレーキングは、アルゼンチンの29歳を6-1、6-7(5)、6-3で破り、ベスト16へ進出。すると、ネット際で挨拶を交わす際に、敗者から意外な言葉をかけられた。

「僕にとっては夢のようなこと。きまりもよくわかってないんですけど、シャツをもらえませんか?」

 ナダルはこの依頼を快諾。ベンチに戻って紫色のシャツを手に取り、すぐさまプレゼントした。もちろんカチーンは大喜び。彼のインスタグラムには「ありがとうラファ・ナダル。これは夢みたいだ。なんて素敵なんだろう」とスペイン語で投稿されていた。

 やり取りはほんの数秒だったが、男子プロテニス協会(ATP)が取り上げて紹介すると、サッカーならおなじみでもテニスではあまり見ない光景だったためか、ちょっとした議論を巻き起こすこととなった。

 イギリスの解説者のデビッド・ロー氏は「申し訳ないが、ペドロ、ネットで相手のシャツを要求するのは良くない」と否定的な意見をXに書き込んだ。
  これに反論したのが元世界13位のニック・キリオス(オーストラリア)だ。いわく「NBAの選手もサッカーの選手も、いつもやっていること。それは思い出であり、一生を懸けて努力して得た経験であり、人類の1%未満しか得られない経験なんだ。あなたには理解できないだろう」。

 女子の世界1位イガ・シフィオンテク(ポーランド)もペドロの行為に理解を示している。同大会の女子準々決勝でベアトリス・ハダッドマイア(ブラジル/同14位)に勝利した後、同じような経験があるかと尋ねられると、「ないけど、もしラファと対戦することになったら、きっとシャツを要求するわ」と返答した。

 一方で、選手の中にもカチーンとは違う考え方がある。4回戦でナダルを7-5、6-4で下した22歳のイリ・レヘチュカ(チェコ/同31位)は、次のように述べた。

「僕は勝つためにコートに立ったんだ。勝つためにそこへ行ったのに、ナダルの後を追いかけて、何かくれないかとお願いするのは難しい。試合をしている時に相手から何かもらおうと考えているなら、なぜその場にいるのだろうか? 僕にしたらそれは奇妙なことだ。このことに関しては、人それぞれ意見があるだろう。僕はペドロがやったことを完全に尊重するよ。何の問題もない。でも、僕ならそのようなことはしない」

 まさにレへチュカの言う通り、考え方は人それぞれ。引退を示唆しているアイドルとの対戦が叶い、シャツをねだる選手がまた現れても不思議はない。

構成●スマッシュ編集部

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