NBAにおける“史上最高の選手”を意味する“GOAT”と聞かれて真っ先に挙がるのは、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)とレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)の2選手だろう。

 どちらも甲乙つけがたいスーパースターだが、彼らのほかにもウィルト・チェンバレン(元フィラデルフィア/現ゴールデンステイト・ウォリアーズほか)やビル・ラッセル(元ボストン・セルティックス)、マジック・ジョンソン、コビー・ブライアント(いずれも元レイカーズ)といったレジェンドが名を連ねている。

 では、近年リーグを席巻している外国籍出身選手では誰になるのか。1990年代から溯れば、ドラゼン・ペトロビッチ(元ニュージャージー/現ブルックリン・ネッツほか)や欧州出身選手として初の新人王に輝いたパウ・ガソル(元レイカーズほか)、初のシーズンMVPを獲得したダーク・ノビツキー(元ダラス・マーベリックス)、現役ではヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)やニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)といった実力者たちが浮かぶ。
  現地時間5月5日(日本時間6日、日付は以下同)に公開された米スポーツ専門局『ESPN』でアナリストを務めるシャノン・シャープがホスト役の番組『Club Shay Shay』にゲスト出演したチャールズ・バークレー(元フェニックス・サンズほか)は、現役のヨキッチがレジェンドのノビツキーを超えたと持論を展開していた。

「ダークは、ジョーカー(ヨキッチの愛称)が現れるまで、外国籍では歴代最高の選手だった…。俺はあのチーム(ナゲッツ)がまたタイトルを勝ち獲ることになると見ている」

 2014年のドラフト2巡目全体41位でナゲッツから指名されたヨキッチは、2015−16シーズンにNBAデビュー。チームには当時ユスフ・ヌルキッチ(現フェニックス・サンズ)というボスニア・ヘルツェゴビナ出身の先発センターがいたが、ナゲッツは2017年2月にヌルキッチをポートランド・トレイルブレイザーズへ放出し、本格的にヨキッチ中心の体制へと移行した。
  ナゲッツは2017、18年に2年続けて1勝差でプレーオフ進出を逃す屈辱を味わうも、ヨキッチの入団と時を同じくして指揮官に就任したマイケル・マローンHC(ヘッドコーチ)の下、翌19年からプレーオフ常連チームに。大黒柱の周囲にジャマール・マレー、マイケル・ポーターJr.、アーロン・ゴードン、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープを据えてチーム力を強化し、昨季フランチャイズ史上初のリーグ制覇を成し遂げた。

「当時は、ジョーカーではなくヌルキッチをキープすべきという声もあったが…。あの出来事がフランチャイズ全体を劇的に変え、あのチームの歴史をも覆した。素晴らしいことだ」とバークレー。

 レギュラーシーズン通算得点で、ノビツキーは外国籍出身選手として歴代最多の3万1560得点(NBA歴代6位)という好位置にランク。2011年にはマブズが初優勝する立役者となり、ファイナルMVPにも選ばれている。

 一方、29歳のヨキッチはすでにシーズンMVPに2度選ばれているほか、オールスターに6度、NBAチームにも5度選ばれ、昨季は文句なしでファイナルMVPに輝いた。8日に発表予定の今季MVPでも最終候補に入っていて、もし選ばれればギリシャ出身のアデトクンボ、カナダ出身のスティーブ・ナッシュ(元サンズほか)を抜き、外国籍出身選手では歴代単独トップの3度目のMVPとなる。
  今季を含めて今後のキャリアでヨキッチが2度目の優勝とファイナルMVP、さらには3度目のシーズンMVPを獲得することになれば、いずれも外国籍出身選手では史上初の快挙となる。それだけに、本人の思いがどうであれ、セルビア出身のビッグマンが“外国籍出身選手のGOAT”と認知される可能性は十分あるだろう。

 ちなみに、ナイジェリア出身で1994、95年にヒューストン・ロケッツを2連覇へ導き、2度のファイナルMVPに選ばれたアキーム・オラジュワンは、外国籍とはいえヒューストン大で3年間プレーしたため、バークレーは元同僚のことを外国籍出身選手とは見ていなかった。

 なお、昨季王者ナゲッツは現在ミネソタ・ティンバーウルブズとのカンファレンス・セミファイナルを戦っており、第1戦をホームで落として黒星スタート。だがヨキッチは32得点、8リバウンド、9アシストとトリプルダブル級のスタッツを残していることから、第2戦以降も猛威を振るうことになりそうだ。

文●秋山裕之(フリーライター)

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