春スタートのドラマ、どれもいいですよね。懸命に希望を見つけていく人々の姿に毎回涙があふれる「アンメット」、風景の美しさと初恋の甘ずっぱさにキュンとする「からかい上手の高木さん」、過酷な運命に心が揺さぶられる「366日」など、人間ってすごい、すばらしい……と思えるドラマが目白押し。
しかしここではあえて、登場人物たちの無茶な行動に「え、そんなことしていいの?」とハラハラして目が離せない、そんなスリリングなドラマをおすすめしてみます。感動させられるのも、無謀なことしちゃうのも、どちらも人間。そこがおもしろい。

■「アンチヒーロー」(TBS)


冤罪の被告を助ける正義の味方=弁護士というドラマはよくありますが、このドラマの主人公の明墨弁護士は違う。実際は罪を犯している(らしい)依頼者の無罪を裁判で勝ち取るなど、やっていることは黒に限りなく近いグレー、まさに名前の通り「墨」色に思えます。しかし回を重ねるにつれ、彼の真の狙いがぼんやりと見えてきたような。彼が覆そうとしているものはなんなのか、どんな「ヒーロー」になろうとしているのか。明墨法律事務所のメンバーの名前に色が入っている理由もあるのかないのか、それも気になってます。

■「街並み照らすヤツら」(日本テレビ)


シャッター商店街で、ケーキ店を営む正義。経営がギリギリで追い詰められ、幼馴染の太一から持ちかけられた偽装強盗の計画に、つい乗ってしまう。なんとか成功して保険金がもらえる……はずが、事態は思ってもいない方向に。主人公が犯罪に手を染めているのに、毎回笑いながら見てしまう、なかなかとんでもないドラマです。正義たちは逮捕されるのか、それとも逃げ切るのか。どちらにしても正義はすでに、何も知らない妻の彩を強盗でおびえさせてしまうという大きな罪、彼女の悲しむ姿を見るという大きな罰を与えられているんですよね。すべてがわかった時、この夫婦はどうなるのかなあ。

■「イップス」(フジテレビ)


今までできていたことが、心理的な理由でできなくなるのが「イップス」。謎を解けなくなった森野刑事と、人気のミステリー作家だったのに書けなくなった黒羽ミコはイップス真っ最中。そんな2人が、お互いを利用しあって事件を解決していく、不思議なバディドラマです。すぐに具合が悪くなる森野の代わりに、ミコが「取材でーす」と殺人現場にずかずか入って行……ったらダメでしょ!と思わずテレビにツッコんでしまう、なんともゆるいミステリー。1話ごとにサクッと解決するし、今のところあまりドロドロした事件もないし、そういうところもゆるゆるしてていいです。最後には2人はイップスを抜けて、本来の仕事に戻れるのか。でも戻らないで、このままゆるゆるコンビとして無茶しててもいいんじゃないかしら。

■文・イラスト/渡辺裕子