長谷川博己主演の日曜劇場「アンチヒーロー」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系)が現在放送中。同ドラマは、長谷川が7年ぶりに日曜劇場で主演を務める、日本の司法組織を舞台とした“逆転パラドックスエンターテインメント”。「正義の反対は、本当に悪なのだろうか」ということを視聴者に問い掛け、スピーディーな展開で次々と常識を覆していく。

長谷川は「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士・明墨正樹を演じ、明墨と同じ法律事務所で働く同僚弁護士・赤峰柊斗役の北村匠海、同じく同僚弁護士・紫ノ宮飛鳥役の堀田真由、パラリーガル・白木凛役の大島優子、東京地方検察庁の検察官・緑川歩佳役の木村佳乃、検事正・伊達原泰輔役の野村萬斎らが脇を固める。

このたび、WEBザテレビジョンでは、自身の正義と父への愛のはざまで揺れる冷静かつ優秀な弁護士・紫ノ宮を演じる堀田にインタビューを実施。撮影で感じている思いや共演者の魅力、今後の見どころなどを聞いた。

■完璧主義な役を演じるにあたり「自分自身の日常も完璧にしたい」

――改めて、紫ノ宮飛鳥というキャラクターの役作りについて教えてください。

紫ノ宮は、完璧主義でプライドが高い部分がありますが、見えないところでたくさんの努力をしている人物だと思います。また、頭のいい人は、早口で喋ったり会話のテンポが早いなと思うので、そういったところを出していければいいなと思っています。普段の私はゆっくり喋る方なので、セリフだけでなく日常から早口で喋るようにして口をならしています。

5カ月も紫ノ宮という役を演じさせていただくので、役を切り離すのではなくて、自分自身の日常も完璧にしたいと思いながら撮影に臨んでいます。

――飯田和孝プロデューサーが以前、紫ノ宮飛鳥という役を「普段やらなそうな人に演じてもらいたい」と話されていましたが、その点についてはいかがですか?

“やらなさそう”ということは、どういうふうになるのか想像できないということでもあると思うのですが、そこを託してくださったことはすごくうれしかったですね。自分の中ではまだまだできないことがたくさんあり日々努力なのですが、走り終えたあとにどう感じるのかなということを楽しみにしたいと思います。

――本作で今までにない挑戦だと感じていることや得られたものがあれば教えてください。

視聴者の皆さんからも反響をいただいているのですが、バイクに乗るシーンは今までにない挑戦でした。免許は前々から持ってはいたのですが、お芝居の中では挑戦したことがなかったので、そういった自分が持っているものを生かせるチャンスをくださったことがすごくうれしかったです。

バイクのシーンがクランクインだったのですが、クランクイン初日は何度経験してもやっぱりまだドキドキしてしまって、たくさん練習していたのにエンストしてしまいました(笑)。

また、近年、時代劇などでも芯の通った力強い役はいくつか演じてきたのですが、こういった社会人の役でかっこよくて自立した女性は演じたことがなかったので、そこはまた新たな挑戦でもありました。


――演じていて苦労した点があればお聞かせください。

専門用語は自分になじむようになるまではすごく苦労しました。分からない言葉は調べて意味を理解すると「あぁ、そういうことか」とすっと入ってくるものもあるのですが、意味を理解しても普段口が言い慣れていないので、そこを慣らすのはすごく大変ではあります。

また、第2話の法廷シーンは事務所のメンバーとではなく単独行動をしているので、その中で少し“明墨さん節”みたいなものを出せたらいいなと思い、普段は淡々とした口調ではあるのですが、少し大きく伝えてみたり手振りを入れてみたりしました。

ちゃんと明墨法律事務所のメンバーなんだということがそういったところに出てくると思うので、そこはすごく楽しかったですね。

紫ノ宮という人間はきっと完璧主義だと思うし、すごく努力をしている人で、信念があってそれを貫くかっこいい女性なので、セリフはできるだけ何度も何度も練習して、“1日に〇回しか間違えない”といったルールを自分の中で決めながらやっています。

――撮影中、印象的だったエピソードはありますか?

第4話で赤峰くんとラーメンを食べるシーンの替え玉は、飯田さんがアイデアとして入れてくださったんです。替え玉をする人は入れるときにちょっと笑顔になるみたいで、私は普段はなかなか替え玉までたどり着けないのですが、紫ノ宮のちょっとしたギャップが出るいいシーンになったのではないかなと思います。

湯気越しの横顔のアングルで、そのときはまだ紫ノ宮の父のことがみんなに明かされていない状況なので、心のモヤモヤした霧のかかった感じと、ラーメンの湯気がすごくリンクしていていいなと思ったシーンでした。


■長谷川博己は「常に自分と戦っていらっしゃる」

――長谷川博己さんとの共演についてお聞かせください。

8年前にご一緒させていただいたとき、私は10代だったのですが、島での撮影に1人で行っていて不安な中、長谷川さんが撮影以外のときにも話しかけてくださったことを今も覚えています。

今でもすごく柔らかくてチャーミングな方なのですが、役のスイッチが入ると本当に迫力がありますし、妥協をしないというか、どのシーンでも絶対に納得のいくものを出される姿に刺激を受けています。

法廷は特に長いシーンになるので、どこかで「もういいんじゃないか」と思ってしまう自分もいると思うのですが、長谷川さんはそういうことが一切なくて、常に自分と戦っていらっしゃる姿を見せてくださり、そうやって私たちのお芝居も引き上げてくださるので、実際にも事務所の先生と後輩のように食らいついていっています。

――北村匠海さんとのバディ感も出てきましたが、演じるにあたりお二人で何か話し合いはされていますか?

第4話で、紫ノ宮が赤峰に過去のことを打ち明けていくシーンがあったのですが、そのシーンの際は2人でどういうふうにしようかということを話しました。

紫ノ宮は父のことをずっと知りたいと思っていて、それを人に伝えることもきっと初めてだったと思います。すごくショックなことではあるけれど、明墨法律事務所の一員として、弁護士として、どう向き合っていくかという大事な場面でした。

気持ちがどんどん落ちてしまう中で、北村さんが「こういうお芝居のときは受け取る側の人がすごく重要だから僕が頑張ります」とさらっとおっしゃってくださって、そのときに、“やっぱりお芝居は人と人とのキャッチボールなんだな”ということを改めて感じました。

第5話の放送が終わり父とも決着は着いたので、ここから私たちは明墨さんの過去についてや父がそこに関わっているのではないかということを探っていくバディになり、2人のシーンがかなり増えてくると思います。

これまではそれぞれが抱えていたものを探っていて、赤峰にはずっと強い態度で当たっていたのですが、きっと最初から2人は同じ線の上にいてそれにただ気付いていなかったのだと思います。ここから最終回に向けては、2人が明墨法律事務所の一員としてどのように動いていくのかというところが見どころになってくると思います。

――藤木直人さんとの共演についてお聞かせください。

初めてお会いしたのは、第5話の対峙シーンでした。久々に実家に戻ってきて父とお惣菜を食べるシーンだったのですが、紫ノ宮も父と会っていない時間があるので、そこは逆に“はじめまして”で良かったのではないかなと。あまりにもコミュニケーションを取りすぎていたら出せないものだったのかなと思います。

劇中ではバチバチしていますが、普段の藤木さんは、プライベートなお話をしてくださったり、「オールスター感謝祭」の前は、まるでお父さんのように「こういうふうにやったらクイズがうまくいくよ」「頑張ってね」と言ってくださるなど、とても優しい方です。

――大島優子さん、林泰文さんも含めた明墨法律事務所メンバーの撮影現場での様子やチームワークを教えてください。

作品自体は専門用語とかがたくさんあって大変なシーンもありますが、事務所はそのメンバーの他にミルもいて、現場の空気感はすごく和気あいあいとしています。

それぞれの年齢もバラバラな中でいろいろなお話をしていて、大島さんや林さんのプライベートなお話を聞いてほっこりしたり、ミルがいてすごく癒されたり。お二人の包容力を感じています。

法廷のシーンなどを撮っていると北村さんの隣にいることが多いのですが、「事務所に帰りたいね」「あの2人に会いたいね」といつも話しています。

――紫ノ宮としての正義についてはどう分析されていますか?

正義って本当に難しい言葉だなと思うのですが、悪でもその中に正義があったり、正義という言葉を掲げれば成立してしまうというのも怖さだなと思っています。

そんな中で、「正義の“正”という字は漢数字の一に止まると書くから、一度立ち止まることなんだ」というのを本で読んだことがあったんです。それって本当にそうだなと思っていて。

いろいろな物事を何も考えずにそれが正しいと思って突き進んでしまうと、誰かを傷つけてしまうことにもなるかもしれないので、一度立ち止まって、他人の人生ではない自分の人生としてちゃんと責任を持って生きていくということが、紫ノ宮というよりも私自身の正義だなと感じています。