分かっていても止められない

またぎフェイントやルーレット、エラシコなど、サッカー界にはいくつか派手なドリブルトリックが存在する。それらを駆使して守備陣を突破するドリブラーはいつの時代も人気を集めたが、派手なトリックを使用しない選手もいる。

代表的なのは、やはりリオネル・メッシだろう。年齢を重ねてドリブルを仕掛ける機会は減少しているが、20代の頃のメッシはバルセロナでキレキレだった。

しかし派手なフェイントを使う機会は少なく、どちらかといえばシンプルなドリブラーに見える。この違いについて語ったのは、同じく世代を代表するドリブラーだった元オランダ代表FWアリエン・ロッベンだ。

ロッベンは、全てのプレイを高速でこなすメッシにはフェイントが必要なかったと語る。

「ロナウジーニョ、ネイマール、クリスティアーノ・ロナウドなど、トリックを巧みに使いこなす選手もいた。しかし史上最高の選手について語るうえで、それらは必要ない。メッシに関して『何かトリックを持っているか?』と問うなら、答えはNoだ。スピードがあり、コントロールが優れていて、彼は単純に全てを早くこなすんだ」(『Tribuna』より)。

それこそスペースの限られた現代サッカーでもメッシがドリブルを連発できた理由とも言える。ロッベンも右サイドを中心にドリブルを連発してきたが、ロッベンも派手なトリックを必要としないタイプだ。縦への爆発的なスピードがあるため、定番のパターンで突破できてしまう。分かっていても止められないという点においては、メッシとロッベンはやや似ているか。