【赤ペン! 赤坂英一】阿部監督1年目の巨人が、開幕1か月で“負の球団記録”を更新した。13日から27日まで13試合連続3得点以下。これ、1993年、2021年の12試合連続を超える球団ワーストなのだ。

 前ワースト記録の12試合連続が初めて生まれた93年は第2次長嶋監督時代1年目。ミスターが13年ぶりに復帰し「スピード&チャージ」をスローガンに掲げ、大いに期待が高まっていたシーズンである。それだけに、前評判とは裏腹な貧打ぶりは、ファンから猛烈な批判を浴びた。

 深刻なストレスのためか「絶好調男」と異名を取った中畑打撃コーチはげっそりと痩せ細り「自宅で倒れたらしい」というウワサまで飛び交ったほど。さらに、外国人のバーフィールドが「ウインドブレーカーのカラーが良くないんだ」と言い出して一悶着も起きた。

 この年、巨人では長嶋監督復帰に合わせてユニホームを一新。ウインドブレーカーはホームではオレンジ、ビジターではイエローを着用することになった。これに、バーフィールドが「黄色は迷いを生じさせる色」だと訴えて、オレンジだけを着ることに変更された。

 そのため、ファン用に販売されていたイエローのレプリカの売り上げが激減。巨人の貧打ぶりがグッズ開発と営業にも悪影響を及ぼしたわけだ。

 ただし、93年と今年ではチームの状態も成績も異なる。93年は12試合中5勝7敗で2位から4位に転落。それに引き換え、今年の13試合は5勝5敗3引き分けで2位をしっかり堅持している。

 特に、2―0で競り勝った23日の中日戦では好走塁が光った。1点リードの4回、岡本和の打球は平凡な遊飛。それでも川相一塁コーチが腕を回したら、中日の遊撃手が落球し、岡本和は二塁へ。その後、萩尾に適時打が出て貴重な2点目が入った。が、川相コーチはこう指摘する。

「そんなのは、ファインプレーでも何でもない。僕たちは選手を走らせるのが仕事、選手は全力で走るのが仕事です。1点しか取れなくても0点に抑えれば勝てる。10点取っても11点取られたら負ける。要は、勝つためにそのとき何をするのがベストか、ということ」

 川相コーチがそう語った28日、巨人は6得点して負の記録は止まった。

 なお、彼は12試合連続記録が生まれた93年、2番・遊撃のレギュラーだった。チーム打率2割3分8厘とリーグ最低だったこの年、チーム最高の打率2割9分をマークしたことを付記しておく。