勝利を手繰り寄せたレーンとタスティエーラ

日本ダービー2023

[GⅠ日本ダービー=2023年5月28日(日曜)3歳、東京競馬場・芝2400メートル]

【渡辺薫&柏木集保 私たちはこう見た】渡辺 まず驚いたのが2分25秒2の決着タイムだ。1600メートルの3歳未勝利戦が1分32秒8だから馬場そのものは速かったはず。おそらく2分23秒台の決着と読んでいたが…。過去10年ではレイデオロが勝った17年(2分26秒9)に次ぐ低速決着は意外だった。  

 柏木 パクスオトマニカの田辺クンが刻んだペースは前半1200メートル1分12秒8、後半1分12秒4。ダービーとすれば落ち着いた流れですし、離れた2番手以降はスローといっていいでしょう。勝ち馬から10着フリームファクシまではわずか0秒5差圏内と珍しい接戦になりました。時計が遅いからといって全体のレベルが低いワケではないですし、レースそのものは見応えあるものでした。

 渡辺 うん。上位3頭の実力は素直に認めていいだろう。その中で勝負を分けたのは鞍上の覚悟と積極性かもしれないな。

 柏木 はい。大事に乗り過ぎた人は後悔しているかもしれません。  

 渡辺 勝ったタスティエーラは道中4番手と有力勢の中では最も前で運んだ。レーンは3週連続で追い切りにまたがって能力の高さとデキの良さを体感していからこそ、積極的に運べたんだろう。早めスパートが最後のクビ差を生んだとみていい。

 柏木 はい。自分のポジションを崩さずに運んだことは正解でしたね。馬場が悪かった皐月賞は勝ったと思ったところで逆転されましたが、今回は押し切りました。一方、ソールオリエンスの横山武クンは、少し慎重に乗り過ぎたでしょうか?

 渡辺 ポジションはタスティエーラの真後ろ。坂上から少しもたついた分が最後の差になったかな。それでも最後はグイグイと伸びて追い詰めたように、悲観する内容ではない。

 柏木 今回に限っては展開が明暗を分けた面が大きいですからね。勝負どころで動かなかったことも、間違いとも言い切れません。武豊さんも〝動かない〟ことでダービーをたくさん勝ってきましたから。もちろん悔しい惜敗ですが、近い将来にはダービーを勝てるでしょう。

 渡辺 前日気配で★へ昇格したハーツコンチェルトが期待に応えて3着。デキが良かったことはもちろん、松山が3コーナー手前から動いたことが功を奏した。ゴール前でもしっかり伸びていたし、血統的にも3000メートルの菊花賞が楽しみになった。 

 柏木 向正面ではほぼ最後方でしたが、ペースが遅いと見るや、一番最初に動きました。好判断と褒めていいでしょう。

 渡辺 ベラジオオペラの4着は大健闘だが、期待を集めた組で案外だったのがファントムシーフ。位置取りは後ろだっとはいえ反応ひと息だった点は納得がいかない。

 柏木 ファントムシーフを含めて、上位勢の能力は接近している世代だと思います。菊花賞に向かわない組も多いでしょうが、今回は特殊な展開だっただけに秋は流れひとつで着順も変わってくるでしょう。

著者:東スポ競馬編集部