高松宮記念2024

[GⅠ高松宮記念=2024年3月24日(日曜)中京競馬場、芝1200メートル]

 長いトンネルを抜け出した先に見えるのは…。どこまでシルシを回したらいいのか頭を悩ませる大混戦模様の今年の高松宮記念。前走重賞で勝利、連対を果たしている好調馬にまず目がいくが、その存在も五指に余る。藤井真俊記者が担当厩舎に探りを入れたところ、大復活なった期待馬が浮上。マッチョ化なったトウシンマカオだ。

 トウシンマカオがブレークしたのは一昨年の秋。それまでの千四〜マイル路線から1200メートルに距離を短縮したことでリステッド・オパールS→GⅢ京阪杯と連勝。当時、主戦を務めていた鮫島駿も「スプリントGⅠで主役を張れる馬」と豪語するほどだった。

 しかし周囲の期待とは裏腹に、2023年になると長いトンネルに入ってしまう。初戦のGⅢシルクロードSを3番人気4着と落とすと、その後は高松宮記念15着(5番人気)、GⅢ函館スプリントS3着(1番人気)、GⅢキーンランドC3着(2番人気)、GⅡスワンS9着(4番人気)と一度も勝てないどころか、常に人気を下回る低調なパフォーマンスに終始した。

 厩舎担当として取材を続けた記者の期待も徐々にトーンダウン。一昨年に見せた輝きは、はかない流れ星だったのかと諦めかけたこともあったが…1年の時を経て突如、復活。昨秋のGⅢ京阪杯を勝って連覇を果たすと今年の初戦GⅢオーシャンSも連勝。まさにスプリントGⅠで主役を張れる存在に舞い戻った。

 一体トウシンマカオに何があったのか? 管理する高柳瑞調教師に復活の要因を尋ねると“血統”の話が出てきた。

「生産者(服部牧場)からも聞いていたのですが、ゆっくり成長する血統なんですよね。確か上には8歳で勝った馬(半兄ベステンダンク=8歳でリステッドV)もいたはずです。実際、トウシンマカオも2〜3歳時は線が細いというか、気持ちで走っているような感じでした。ただそんな馬が前走はデビュー以来、最高体重となる480キロ。おなか回りを見るといくらか太かったかもしれませんが、レースでの強い勝ちっぷりを目の当たりにすると、そういう体形になった可能性も…。いずれにせよ5歳を迎えて馬が成長したのは確かだと思います」

 改めて同馬の馬体重の変遷を振り返ると、2歳夏のデビュー戦は446キロ。冒頭で記した一昨年秋の連勝時も454キロしかなかった。しかし、それから1年を経て昨秋のGⅢ京阪杯では468キロ。そして前走のオーシャンSではトレーナーの言葉通りデビュー以来、最高となる480キロを記録。花巻東高時代とは別人のようにマッチョ化したドジャース・大谷翔平のごとく、トウシンマカオもマッチョなムキムキボディーを手に入れたのだ。となれば今年の高松宮記念では、15着に敗れた昨年とは全く違った姿を見せてくれるに違いない。

「昨年は馬場(不良)がすべて。あそこまで悪くなってしまうとさすがに力を出せませんけど、多少の道悪くらいなら問題ありません。あとはもともと左回りより右回りのほうがスムーズだったのですが、それも充実した今なら…という気もしますね。状態的には前走からさらに上積みが見込めると思っているので、期待したいです」(高柳瑞調教師)

 鞍上には名手・ルメールがスタンバイ。同騎手と高柳瑞厩舎といえば、スターズオンアースで結果を残しているホットラインだ。今年こそスプリントGⅠの主役へ――。いよいよ機は熟した。

年齢とともにパンプアップしてきたトウシンマカオ
年齢とともにパンプアップしてきたトウシンマカオ

著者:藤井 真俊