昭和40年5月、日本ダービー。レース直前の東スポの競馬面は、おおぶりのメンバー表と「最終情報」がひとかたまり、さらに大きな調教タイム表が掲載されていた。

 大一番目前を感じさせるレイアウトだったが、これに彩を加えていたのが、その横に据えられていた有名人予想だ。

 今でこそ、どのスポーツ新聞でも目にするビッグレースの恒例記事なのだが、広く認知度があるからこそ成立する企画でもある。これは、競馬がちまたで当たり前に語られるようになった証拠でもある。

 この時登場したのは俳優・勝新太郎、横綱・栃ノ海、プロレスラー・豊登、プロ野球産経・豊田泰光、プロ野球巨人コーチ・牧野茂の5人。いずれも各界の大物だ。

 中でも当時座頭市シリーズで絶大な人気を博していた勝新太郎は「本命は絶対に買わない」と豪放なキャラクター通りの前振りで読者をつかみ「一発を狙う」と宣言していた。

 大御所がチョイスしたのはコレヒデ、キヨカミというダークホース2頭。「いずれも名門の出だし、いままで(成績が)悪くても、でっかい勝負になればふだん以上に馬力を出してゴールめがけてまっしぐらに駆け込むと信じている」としている。

 結果この2頭は不発に終わり、17着と9着。レースは2番人気キーストンが勝ち、1番人気ダイコーターが2着という堅い結着になったのだが、映画スターの派手な穴予想は確実にこの年のダービーをヒートアップさせたはずだ。

各界の大物の予想が紙面に躍った
各界の大物の予想が紙面に躍った

著者:東スポ競馬編集部