ジャンタルマンタルの未来は?
ジャンタルマンタルの未来は?

NHKマイルカップ2024

[GⅠNHKマイルカップ=2024年5月5日(日曜)3歳、東京競馬場・芝1600メートル]

 5日、東京競馬場で行われた第29回GⅠ・NHKマイルC(芝1600メートル)は好位3番手追走から直線半ばで抜け出したジャンタルマンタルが優勝。勝ち時計は1分32秒4(良)。昨年の朝日杯FSに続く2つ目のGⅠタイトルを手にし3歳マイル王に輝いた逸材の今後の可能性を、レース後の陣営コメントから探っていく。

 ともに単勝290円のオッズが示す通りに戦況は2歳チャンピオン2頭による〝2強〟となった。しかし圧倒的なパフォーマンスを見せつけたジャンタルマンタルが、実際の勢力図は〝1強〟であることを示した一戦だったといえよう。

 僅差とはいえ1番人気に支持されたのは昨年の最優秀2歳牝馬アスコリピチェーノ。クラシック第1冠の結果は桜花賞2着、そしてここへのレース間隔は中3週。皐月賞3着、中2週の最優秀2歳牡馬に対してアドバンテージを得たうえ、鞍上にルメール確保と追い風が吹いていたことは確かだ。実際に川田も懸念していた点がタイトなローテ。「皐月賞でベストより長い距離を全力で走り切った後の中2週。しかも長距離輸送を2往復しなければならなかったですから。返し馬では、やはりしんどいと思いました」と決して万全の状態ではなかったことを認める。

 管理する高野調教師も「表面上は競馬に行けると判断しましたが、絶対に体の芯にはダメージがあったはず。その中でスタッフがケアして競馬で冷静に走れるよう努めてきました」と懸念を共有していた。ただ、そんな不安材料を実戦の走りで吹き飛ばした3歳マイル王は世代の枠を超えた絶対王者への可能性を秘めているといえよう。

「皐月賞の時よりゲートで冷静でした」(高野調教師)と好スタートを決めると無理せず好位を確保。「千六でリズム良く走りさえすれば、と思っていました。いい形で前半をクリアできたので大丈夫かと。3〜4コーナーで負けることはないと思いました」(川田)と確信を得て直線に向くとあとはまさに独壇場に。シ烈な2着争いをどうにか制したアスコリピチェーノに2馬身半差をつける完勝で3歳最強マイラーを証明した。

「本質的にはもう少し長い距離もこなせますが、今はメンタルが真面目過ぎますので千六の競馬がぴったり」とは高野調教師の現状ジャッジ。「生まれ持った能力の高さ」がフルに生きる舞台がマイル戦だという。川田も「心身が成長すれば日本で一番強いマイルの馬になれるのでは。古馬を相手にしても頂点を取れるレベルのポテンシャルを持っている」と賛辞を惜しまない逸材が、早くも今秋に日本のマイル王の座に就いても不思議はない。

著者:山河 浩