太陽油脂株式会社=守屋町=はこのほど、解体予定の社宅を消防訓練用の建物として神奈川消防署に提供した。解体工事が始まる8月まで同署や消防団が訓練を実施。4月27日には、地元町内会との消防訓練を開催した。

入江町公園に面した同社の社宅は、建物の老朽化に伴い3月末で廃止となり解体工事が始まる予定だった。そんな中、日頃からの地域貢献活動で消防署とも親交のあった同社が、区内には消防の訓練施設が多くないことを知り、工期を後ろ倒しにして7月いっぱいまでを訓練拠点として提供することになった。「消防活動を応援することは、地域の防災力を高めることにつながる。会社をサポートしてくれている地域への恩返しの思いで提案した」と中山悟代表取締役社長は話す。

初めての訓練となった4月27日は、地元の入江1丁目東部町愛会との共同訓練を行い、大勢の親子連れも参加した。まずは公園で「コンロ火災デモンストレーション」を実施。コンロ火災では水をかけるのはNGで消火剤が必須であることを、実演で披露した。続いてはグループに分かれて、社宅の各部屋でテーマごとに訓練・体験を行った。AEDや心肺蘇生法の実技や断水時の非常用トイレの実験を体験し、同社による「石鹸づくり」教室も楽しんだ。

目玉の一つが、「煙避難体験」。身体に無害の煙を室内に充満させて、煙による視認性の悪化や低姿勢での正しい避難行動を学んだ。神奈川消防署の飯島俊朗課長は、「実際の建物で煙体験をできるのは、私の消防人生でも初めて。貴重な機会になったのでは」と話した。

訓練に参加した子どもたちは、「心臓マッサージが結構大変」「煙は全然見えなくて怖かった」と振り返った。同町内会の林元のり子会長は、「企業の方のサポートはありがたいこと。こうやって地域で顔を合わせることも、災害に強いまちづくりにつながると思う」と語った。

5月には防火防災協会の会員向けの訓練、6〜7月は消防隊・消防団による消火やロープレスキューのほか、室内床や壁、玄関ドアの震災対策(破壊)訓練など、社宅を生かした訓練の実施を予定している。