横浜市の2023年中の救急出場件数は過去最多となり、初めて25万件を突破した。市では安心できる救急体制を維持するため、救急隊の増強に加え救急要請を減らすための「予防救急等推進プロジェクト」を発足。ケガや急病等の救急車が必要となる事例の抑制や正しい119番通報の普及啓発を目指す。

市内の2023年の救急出場件数は、過去最多の25万4636件。これは市民の15人に1人の割合に相当する。2024年3月末までの件数も、すでに前年同比で9・8%増と、右肩上がりの状況が続いている。

高まる救急需要を受けて、市では救急隊を過去10年で21隊増設し85隊体制に増強。今年度中にはさらに2隊増となる予定だ。また、熱中症やインフルエンザ等の感染症で出場が増える夏季と冬季は、1日約5隊の増強救急隊を編成し体制強化に努めてきた。しかし出場指令から現場到着までの平均所要時間は、10年間で2分延伸の8・8分。病院に引継ぐまでの総活動時間も約14分伸び、現場は逼迫している。

ケガ・急病を抑止

そこで発足されたのが、「予防救急等推進プロジェクト」。中・西・鶴見・神奈川・南・港南の6消防署に新たに配置された担当課長を中心に市の関係局と連携し、救急要請の抑制を目指す。

取組みの柱となるのが、救急車が必要となる事態の未然防止。救急搬送の実態を年齢別にみると、高齢者と乳幼児が多い。特に前者は転倒による一般負傷、後者は発熱や頭部の負傷が多くなっている。それぞれの防止策を紙媒体や子育てアプリ、ウェブサイトの防災eパーク等で広報し、ケガや急病の抑止を図る。また、不要不急の救急要請の減少も課題の一つ。救急車を呼ぶべきか迷った時の「#7119」などの活用を呼びかけ、救急車の適切な使い方の普及啓発も強化していく。

プロジェクトリーダーを務める中消防署の西川浩二課長は、「効果的に啓発しながら、『予防救急』という考え方を定着させたい。市民が安心できる救急体制を目指す」と話した。