土地の区画整理などによって、古い地名が失われつつあるなか、町田市の歴史を調査・研究する町田地方史研究会が、かつて存在した地名について冊子にまとめている。同会会長を務める小島政孝さんは「地名に込められている歴史を多くの方に知ってもらいたいと思う」と話している。

小島さんが仲間と共に発行したのが、冊子「町田の地名」。3年前に南地区(高ヶ坂、金森、成瀬、小川、鶴間)編を製作し、先ごろ、忠生地区における地名の由来をまとめた冊子を発行。昔の地図と現代使用されているものの比較や地名の由来、村の変遷についてなどを記した。

失われる旧地名

町田が住宅地として発展する中で、土地の区画整理が進んでいったことが、地名が失われていく背景にはある。元々は人が住む田畑ごとに名前がついていたが、「丁目」という表記や「○○西・○○東」といった地名へと変わっていった。

同会は結成40周年の節目となる2012年にこの冊子製作を企画。発行に向け調査が進められてきた。小島さんは「元々あった地名がなくなり、おもしろみが減ってしまったと感じる。今、記録しなければ過去の土地のことが分からなくなってしまう。必要なことだと考えて取り組んでいる」と話す。

問題も

歴史調査にあたる中、問題もあるという。江戸時代に記された検地書(水帳)などをもとに土地の情報収集を行う中で困ったのが、地域によって資料の現存に差があることだった。

「捨てられてしまったなどの理由で保存されていないことも多くあった」と振り返る同会副会長の重政文三郎さん。「新たな資料の発掘や、昔のことを知っている人からの情報提供はとても貴重なことに感じる」とほほ笑む。

次は鶴川地区

2冊目を発行し同会は現在、3冊目の検討を始めている。「次は鶴川地区を考えている。地名はその土地の歴史に関わるものなどから生まれることがほとんど。忠生地区は伝説によってついた地名が多い傾向にあり、興味深かった」と重政さん。

小島さんは今後について、「資料をしっかりと集めて、いずれは全地区の冊子を発行したい」と話している。