横浜翠陵高校野球部にノッカーとして活躍する女子部員がいる。高栁依奈(いな)さん(3年)。高校野球の夏の神奈川大会開幕まで50日を切った5月18日、同校のグラウンドでは練習に励む部員たちを前に、高栁さんがリズミカルにノックバットを振る姿があった。

中学ではバドミントン部でプレーヤーとして汗を流した高栁さん。高校で野球部を志したのは野球経験者の兄の影響だった。兄の引退試合を見たのを機に「選手を支えるマネジャーの格好良さを改めて感じた」という。

入部後、チームのために懸命に活動する日々が仲間たちとの絆を深めていった。「試合が始まるギリギリまで、選手たちの近くにいて同じ緊張感を共有したい」。心に強い思いが芽生え、次第に熱を帯びるのを感じた。

2年生の夏、同部の田中慎哉監督に相談したところ、ノッカーになる提案を受けた。「野球は全く未経験。バットを握ったことも無かった」という高栁さん。家族や監督、男子部員たち、時には他校の指導者からもアドバイスを受けながら必死にノックの練習に励んだ。両手には無数のマメができ、練習後、手袋を外すと血が滲んでいた。

「一球一球を大切に」

同年秋から本格的にノッカーを務め、今年4月の春季県大会では試合前ノッカーを担当して注目を集めた。同校は1回戦を9-4と快勝。2回戦で強豪・桐光学園に0−14と完敗を喫すも、ノッカーとしての見違えるほどの成長を知る田中監督は「信頼して任せられる」と高栁さんに賛辞を呈する。

じきにやって来る夏の大会。共にマネジャーを務める山本純白(ましろ)さんを含め同期13人と挑む最後の夏に向け「一球一球を大切にしたい」。気持ちを一層引き締めて、力強くノックバットを握る。