古株の経営陣もベテラン社員たちも、最初は賛成していた。しかし、そこで決まった施策そのものに問題があった。

・カフェ風オフィスの内装工事
・仮眠室の設置
・パーソナルトレーニングジムとの契約

などは、ベテラン社員たちも、

「それで、やる気がアップするなら……」

と容認していた。しかし、

・週休3日制

の導入には、強く反対した。それでも、

「ここで反対したら、組織のイノベーションは起こらない」

と社長に押し切られ、プロジェクトで決まったことはすべて実行に移された。ところがこれらの施策が歓迎されたのは最初の数カ月だけで、その後は最悪の結末が待っていた。やる気がアップするどころか若い社員は不満ばかり口にするようになった。しばらくしてプロジェクトメンバーも、ほとんどが会社を辞めてしまった。

このような結果となり、社長は責任をとるどころか逆ギレした。

「スタートアップの会社は同じようなことをしても成功した」

「違うのは、50代前後の社員が多いことだ」

「若い社員だけの組織だったら、絶対にうまくいっていた」

このような発言をしたため、50代の取締役をはじめベテラン社員たちが「聞き捨てならない」と訴えたのだ。

前提と根拠を間違える致命的なミス

いったい何が問題だったのか?

正しい「思考力」がなかったことが、まず大きな原因だろう。前提と根拠を間違えたのだ。

たとえば、ファンサービスをしっかりやることで、プロ野球選手はファンに愛されるだろう。しかしプロ野球選手として活躍していることが前提だ。つまり活躍せずにファンサービスばかりやっても、野球選手として愛されることはないのだ。

したがって、カフェ風のオフィスにしたり、仮眠室を設けたり、週休3日制にすることでやる気がアップするのは正しいかもしれない。根拠と主張は合っているだろうが、仕事で活躍できることが前提だ。