これまで金利が抑制されてきたために、収益性の低い投資が正当化され、日本経済の生産性が低下した。金融正常化によって、この状態が修正されることが期待される。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第117回。

低金利がもたらしたのは収益性の低い投資

日本銀行は3月18日の政策決定会合で、金融正常化の開始を決定した。

これまでの金利政策は2016年に導入されたものであり、政策金利がマイナス0.1%に設定されていた。さらに、イールドカーブコントロール(YCC)によって、長期金利(10年債利回り)が0%程度に抑えられた。

今回の正常化決定によって、政策金利におけるマイナス金利を廃止して0.1%にする。また、YCCを停止する。これによって、金利が市場の実勢にしたがって上昇していくことが期待される。

これまでの金融政策は、日本経済の資源配分を大きく歪めてきた。特に問題なのが長期金利の抑制だ。正統的な中央銀行の金融政策は、政策金利だけをコントロールし、それ以外の金利については市場に委ねる。

しかし、イールドカーブコントロールは、直接的な介入によって長期金利もコントロールしようとするものだった。

したがって、本来あるべき金利体系よりは長期金利が抑えられた、歪んだ金利体系が継続してきたことになる。これによって、日本の資源配分が撹乱された。具体的には、収益率の低い投資が正当化され、資源の無駄遣いが行われてきた。